ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #62

完全無人・24時間営業可能 ロボットコンビニ「VenHub」体験記

前回の記事:
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  2025年6月、ロサンゼルス国際空港(LAX)に接続するLAX/Metro Transit Center Stationという新駅ができました。そこに、画期的なロボット無人コンビニエンスストア「VenHub」が開業しました。

 筆者は開業直後の6月25日にこの革新的な店舗を実際に体験してきました。この最新技術の仕組みと実用性について考察します。
 

補充以外の商品管理から販売まで、自動化システムで完結


 VenHubは無人で稼働するロボットコンビニエンスストアです。筆者は2回訪れましたが、完全に無人でした。人手が必要なのは補充や定期メンテナンスの時だけでしょう。

 この店舗は駅構外という立地もあり、24時間営業を実現しています。従来のコンビニエンスストアとの最大の違いは、人的オペレーションを排除し、補充以外の商品管理から販売まで、自動化システムで完結している点です。

 店舗の外観は近未来的なデザインで、利用者の注目を集めやすい構造となっています。内部には複数のロボットアームや複数商品の注文を受け付けるための昇降式の台、自動取り出し口などが配置され、商品のピックアップから受け渡しまでを自動で行う仕組みが構築されています。
  
筆者撮影 2025年6月25日 ロサンゼルス国際空港/メトロトランジットセンターステーション
 

無人ロボットコンビニの利用体験はいかに


 筆者が実際に体験した購入プロセスは極めてスムーズでした。
 
購入プロセスの一連の様子

 まず、専用アプリの登録が必須となっており、このアプリから欲しい商品を選んでカートに入れ、決済を完了するという流れはECサイトと同じです。検索、お気に入り、カテゴリーなどECサイト同様の選び方ができます。決済手段はApple Pay、Google Pay、登録したクレジットカードなどを選べます。
  
VenHubアプリ(App Storeより)

 商品を選択して決済を完了すると、ロボットアームが正確に商品をピックアップします。アーム先端は掴むタイプと吸着するタイプの2種類があり、商品に合わせて使い分けをしていました。

 ピックアップした商品は、専用のBIN(受け取りボックス)に収納していきます。自動販売機のように商品を一つずつ決済して受け取るのではなく、まとめて購入することも可能な仕組みです。

 受け取り時はアプリの受け取りボタンを押すことで、BINに揃った商品がエレベーターのように降りてくる仕組みになっています。このシステムは4つのBINが設置されているため、複数の注文に同時対応できる設計となっています。

 品揃えは、普通のコンビニのようなドリンクやお菓子が中心ですが、OTC医薬品やスマホの充電器、ワイヤレスイヤホン、駅開業記念の土産物など多岐にわたります。医薬品や土産物は、実物が見やすいように手前の棚に置かれていました。

 価格帯はアメリカによくあるガソリンスタンド併設のコンビニよりも安めでした。Krogerなどの大手スーパーと同等に見えました。
 

注目が高まる一方、費用感などの課題も


 革新的な仕組みと同時に、課題もあります。まず、システムの複雑性による初期投資の高さが挙げられます。ロボット技術やAIシステムの導入には大きな費用が必要で、投資回収期間を慎重に検討する必要があります。

 VenHub Smart Storeの設置には初期費用として4,000万円前後(25万ドル+オプション費用)が必要で、月額運営費用として約37万円(2,500ドル)のSaaS費用とオプションのメンテナンス費用が発生します。

※参考
VenHub公式サイト
https://www.venhub.com/

Robot-run store VenHub is changing the future of shopping
https://www.foxnews.com/tech/robot-run-store-venhub-changing-future-shopping

 システムは22×10×10フィート(6.71 x 3.05 x 3.05m)の建物に2本の産業用ロボットアーム「Barb」と「Peter」を搭載し、400種類以上の商品を管理できる6台のスマート冷蔵庫を装備しています。

 防弾ガラスや24時間監視センサー、バックアップバッテリーシステムなどのセキュリティ機能も充実しており、従来の有人店舗と比較して建設・運営コストを31%削減し、24時間営業を実現しています。

 防弾ガラスをはじめ、アメリカでは重要視されるセキュリティに優れた完全無人店舗であることに加えて、設置が7日間でできるという点がアメリカでは注目されています。現在800件以上の予約注文を受けているそうです。

 アメリカの高騰する人件費・物価を加味すると、駐車場4つ分の土地の賃料等を含めても、24時間従業員1人以上を配置する月額コストの半分以下で24時間営業が可能と注目されています。初期投資は大きいですが、売上さえ伸びれば回収できる可能性があります。

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