関西発・地方創生とマーケティング #06
「中川政七商店には、何も無いんですよ」中川政七商店13代目がそう語る理由と、奈良の地方創生【能川 一太】
2018/11/02
大事なのは業界で一番の企業がその土地で成功すること
奈良において、工芸では「中川政七商店」、ホテルは「奈良ホテル」など、魅力的なコンテンツを増やさなければいけない、と語ります。確かに、人は目的が二つあると動くと言われています。そして、地元にお金を落として貰うには、泊まってもらうことが大事です。そうすれば食事やお酒も消費されます。
中川さん曰く、「奈良ホテル」は、重要なポイントだそうです。
小粒の企業10社より、「奈良ホテル」1社が今以上に良くなれば、奈良全体が良くなるほどに影響力がある、と言います。
その理由は、「一番格が上のホテルが輝けば、他社ホテルも進出するようになり、『奈良には、泊まるところが無い』などとは言われないと思う」というわけです。やはり地域の一番星が輝くことが大切なのだ、と。
これは話を伺っていて、とても腹落ちしました。業界で一番の企業が成功しなければ二番手以降の企業は出てきません。普遍的な真理だと思います。
ところで、奈良ホテルは1909年に営業を開始した老舗で、JR西日本と私が所属する近鉄グループの傘下にありました(今年8月末にJR西日本100%)。そこから鉄道会社が地方創生に果たす役割についての話になりました。
「鉄道は、半公共なので、地方の一企業が輝くというのとは少し意味合いが違う。それに公共よりもメッセージが強い。鉄道というインフラ以外の商売でも、奈良に良いコンテンツを用意することはできる。腰を据えて取り組むべきであって、決してプロモーションだけに偏るべきではない」、と。
改めて、鉄道会社はグループとして腰を据えて地域に関わっていかなければならない。そして、そこには単なるプロモーションではなく、マーケティングが必要になると感じました。
さて、「地方創生とマーケティング」というテーマ、今回で6回目になります。前半は私自身の経験と考えに基づいて好き勝手に書きましたが、後半は中川さんに取材しました。
今回の取材を通して、お話を伺って、それをその場だけの理解に留めるのではなく、文字にまとめてみたり、他の人と話をしてみたりすると、その取材対象者が本当に伝えたかったことが理解でき、自身の考えにも変化を与えてくれるということが分かりました。執筆に当たり、ご協力くださった方、そして読んで下さった方、皆様ありがとうございます。
今後も関西にゆかりのあるユニークな方々を取材して、地方創生とマーケティングにとって大切なことを発信していきたいと思っています。
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