リテール・EC

リテールメディアの信頼性向上のためガイドライン作成。その内容と意図は?【リテールメディアコンソーシアム座談会】

 

ガイドラインを実務の現場でにいかに活用してもらえるかが重要


ーーガイドラインの作成は、どのようなプロセスで進めましたか。

 1年弱くらいは、それぞれ異なる立場の3人で目線を合わせながら、バランスを取るためのチューニングを行いましたね。

福田 そうですね。最初は、実例も盛り込むことでデータの使い方を細かくイメージできるようにしようというところからスタートしたのですが、それではターゲットが狭くなりますし、本当に伝えたいことも薄れてしまうと考え、それよりも広くみんなが理解できるようなものを目指すことにしたというプロセスはありました。

 データビジネスは、生活者に不信感を持たれてしまっては成り立ちません。リテールメディアの中心には小売さんがいて、その直接の顧客は消費者です。まさに消費者のデータをお預かりしているので、消費者視点でリテールメディアのあり方を考えようというのが、このガイドラインで貫かれているポリシーです。

寺門 私は、実際にリテールメディアに取り組む企業の法的支援を行ってきた経験を生かして、より実務的に分かりやすくまとめることを心がけました。その中でも、朱さんや福田さんに非常に助けられながら、法的観点における留意点を、実際にリテールメディアが活用される場面に即して説明するようにしていきました。

ーーガイドラインの作成で特に難しかった点や、まだ残っていると感じている課題点はありますか。

福田 だいぶコンパクトにまとめられた自負はあるのですが、どこまでの人に伝わるのかという点にはまだ不安が残っています。例えば、法律の部分は受け取り手からすると難しい表現がまだあるのではないかと思いますし、そうした部分は今後、より分かりやすくしていければと思っています。
 
株式会社 フェズ
開発本部
データ基盤部
部長
福田 大賀氏

自治体向け基幹システム開発を経て2017年にフェズ入社。
以来、データ基盤の立ち上げや小売企業とのデータ連携を推進し、現在はリテールメディア領域を支えるデータ基盤の設計・開発・運用を統括。
技術とビジネスをつなぐ役割として、データ利活用による新たな価値創出に取り組んでいる。

 リテールメディアコンソーシアムという、小売、メーカー、アドテクの事業者などが一緒に参加する業界団体としてガイドラインを出す上で一定の公共性が必要だったので、その合意形成プロセスには時間がかかりました。ただ、そうしたことで、高い目線を持ったガイドラインを出すことができたと感じます。

重要なのはこのガイドラインを各企業に実務現場でいかに活用してもらえるかです。高邁なガイドラインにふさわしい業界であり続けるために策定したという面があるので、業界団体として自浄作用を持ち続けるということが、これからの課題になると思います。

寺門 やはり、どのような方々にどれくらいの分量で、どのようなメッセージを届けるのかという点が難所だったかなと思います。どうしても正確性や網羅性を考えると細かくなってしまうのですが、細かくなれば分かりやすくなるというものでもなく、その情報があると逆に分からなくなってしまう場合もあります。そこでどうバランスを取って一番届けたいメッセージにしていけるかに苦戦しました。

そこは、まだ完璧ではない部分もあるかと思います。実際に事業に取り組まれている方々に、このガイドラインを見ていただき、ぜひフィードバックをいただきたいと思っています。
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後編「生活者目線を軸に、安心安全なリテールメディアの発展を願い、ガイドライン作成【リテールメディアコンソーシアム座談会】」に続く
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