関西発・地方創生とマーケティング #09

「インスタは、浮世絵だ!」 500年続く蔵元「剣菱」が大事にしていること【剣菱酒造 白樫政孝社長】

前回の記事:
「止まった時計でいろ」 500年続く、灘の蔵元「剣菱」の家訓【白樫政孝社長】

Promotion - インスタは、浮世絵だ!

 前回に続き、500年続く灘の蔵元「剣菱」について分析してみたいと思います。今回は、Promotionの観点からです。

 「インスタは、将来に残す記録になる」

 剣菱の白樫社長は、江戸時代に「剣菱がどのように飲まれていたか」ということは、浮世絵や文献が残っているから分かる、と言います。Instagramも、後世においては同様の役割を果たすだろう、と。Instagramを通じて、剣菱も歴史の一部になるということですね。



 そして、Instagramの、もう一つの役割が情報発信というよりは、むしろ「情報をもらうこと」だそうです。どういう人がいつどこで、どのような飲み方をしているのか。自分たちがつくる剣菱が流通経路を通って、その先どこに届けられているのか。何をどう伝えれば良いか参考にする、と。

 伝えるのは、「スペックか、情緒か」

 剣菱の良さを伝えようとして、例えば「剣菱は山田錦を何パーセント削って・・・」とスペックを並べ立てても、お酒に詳しくない人にわかりません。

 デジタルマーケティングにありがちな話ですね。相手がどの程度の知識を持っていて、どういうことに課題を感じていて、どうなると嬉しいのか。相手の立場で伝えることが大切なのでしょう。

 伝え方は、アメリカのように言葉がはっきりしているのならスペックで、フランスのように言葉が曖昧なら情緒的に伝えるのが良いそうです。ちなみにお酒や食事の説明で、「スペックか情緒か」のスペックから入る人は、味自体には興味が無い人が多いそうです。
 

「営業いない、広告しない」

 社員、蔵人合わせて150人ほどの規模ですが、営業は社長一人、広告もしないそうです。

 ここにも家訓が現れます。

「お客さまからいただいた資金は、お客さまのお口にお返ししよう」

 お客さまからいただいたお代金には、「またおいしいお酒を造ってね」という思いが込められています。だからこそ、そんなお客さまの思いを大事にし、いいお米を買い、お酒がおいしくなるために手造りで酒を造るなど手間暇に惜しみなく使わせていただく。だから、広告にはお金をかけないのだそうです。

 ただし、試飲会などのイベントには出ていらっしゃいます。それは、媒体を通してではなく、直接お客さまに、なぜこういう味なのか、企業理念を伝えてより深く剣菱を理解してもらうためだと話します。

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