カンヌライオンズの第一の魅力は、世界から集まる事例とそのキュレーション機能です。カンヌライオンズが「贈賞」という形で見るべきものを教えてくれるので、皆が参考にできる。そしてさらに、300以上あるセミナーで、より整理された知見に触れることもできるのです。
分かりやすさのためのはずが、返って分かりにくい
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この9つのトラックについて復習しておきましょう。①コミュニケーション、②クラフト、③エンターテインメント、④エクスペリエンス、⑤グッド、⑥ヘルス、⑦インパクト、⑧イノベーション、⑨リーチとなります。
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昨年は明確な定義が無かったように思うのですが、今年はそれぞれの定義がきちんとなされています。9つすべてを確認するのは、なかなかに大変なので、ここでは、①コミュニケーションと⑨リーチについて、見てみましょう。
まず、①コミュニケーションは、「そのキャンペーンが素晴らしい生活をもたらすような、実行に移されたクリエイティブなアイディア」と定義されていて、フィルム、アウトドアなど古くから存在するライオン(部門)がメインとなります。
それに対して、⑨リーチは、「ブランドが効果的に消費者にアプローチするための、インサイト/ストラテジー/プランニング」という定義になります。僕なりに解釈してみると、この2つのトラックは、広告ビジネスの中核であり、従来の考え方で言えば、「クリエイティブとメディア」と考えることができるのではないでしょうか。
セミナーについては、この9つのトラックに加えて、今年はさらに「10のテーマ」も設けられました。「ブランド・イン・カルチャー(カルチャーの中のブランド)」や「プルーヴィング・ザ・バリュー・オブ・クリエイティビティ(クリエイティビティの価値の証明)」など、そのセミナーのメッセージや内容によって分類されています。トラックもテーマも、Webサイトやスマートフォンアプリでは、検索をかけて該当するセミナーが選べるようになっているというわけです。
果たして、トラックとテーマ、この2つの施策は、上手くいっているでしょうか? 昨年の記事にも書いたように、9つのトラックについて僕自身は「ナイス・トライ!」だと思っています。
しかし、そこにさらに10のテーマが加わると、いかにも分かりにくい。どちらにもそれなりの意味はあると思うのですが、使い勝手は決してよくない。分かりやすさのための施策のはずが、返って分かりにくくなっている。そんな印象を持ちました。
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さて、ここまでの開催分だけでも、興味深いセミナーが幾つかあったので、ご紹介して行きましょう。ここでは、トップ・クリエイターによる2つのセミナーを取り上げたいと思います。