[Agendaスペシャル] スポーツ・スポンサーシップの幸福なカタチを探る #02
日本のスポーツビジネスは、「環インド洋圏49億人」を狙え
2018/05/15
日本のスポーツ市場の成長への示唆
前回、欧米のスポーツスポーツが巨大化した背景について紹介した。そこからわかることは、マクロ的な環境変化の中でビジネスプレイヤーとスポーツプレイヤーが相補的に協力してお互いのビジネスの発展に尽くしてきたということだ。
これは「優れたビジネスリーダーがそうしてきた」とも言えるし、「そうせざるを得ないほど欧州や米国の製造業の地盤沈下が激しく、次のビジネスを挑戦せざるを得なかった」とも言える。
そして今、日本も少子高齢化がどんどん進み、かつての主力産業が国際競争力を失って行き、低成長を続ける中で、新たな成長戦略が求められる時代にさしかかっている。
こういった中でスポーツ産業の発展という点で考えるよりも、「スポーツを活用し、新しい産業クラスターや産業都市を構築する」といったもう一つ大きな視点で物事を考えていく必要がある。
この市場形成においては、図3にあるように、従来の「親会社やスポンサー企業がスポーツ事業者を協賛する」といったスポンサーシップモデルでは限界がある。
今後は企業、スポーツ事業者、自治体(都市)などがパートナーシップを組み、スポーツを通じて日本経済や社会の課題を解いていく「パートナーシップモデル」にどれだけ移行するかが鍵になるであろう。
スポーツが成長できる市場はどこにあるか
ここで有力なスペース(新規開拓できる市場)は3つある。- 1)協働で新規市場を創造する
- スポーツを活用し、街づくり(都市再開発)や新たなスポーツツーリズム需要を生み出す、鉄道会社が沿線のスポーツ習慣を増大させ、スポーツを活用したコミュニティ型外出需要をつくり出すなど。
- 2)スポーツ領域の民営化
- スポーツ施設の多くは公共施設であり、部活などの多くのスポーツサービスは学校で提供されている。つまりこの巨大な公共ハードと公共サービスの領域の民営化は、かつて国鉄の民営化、通信の民営化、郵便事業の民営化によってその領域の市場が成長発展したように、大きな市場を生み出すポテンシャルがある。
- 3)スポーツ輸出(輸出+インバウンド需要)
- 欧米スポーツはトップスポーツがグローバル化を見せているが、日本がまだ優位性があるのは実はプールなどの施設管理や、スポーツターフの管理技術、学校体育におけるスポーツ指導のハードとソフトの一体化したサービスなどである。こういったものをアジアやアフリカの国が求めているという需要がある。 ここにおいては、これまでのように輸出をしていくというビジネスモデルもあるし、スポーツの「メッカ」や「資格取得講習」「スポーツビジネスパーソンの養成スクール」などの機関を設置し海外から多くの人材を呼び込むというインバウンド型のビジネスも可能性があ
る。
こういったテーマの具体的な事例を図4に示した。
最終的にここでねらっていくのは、インド洋を中心としたアフリカ、中東、インド、東南アジア、中国、オセアニアに広がっていく「環インド洋圏」の49億人の人口市場である。
これらの国は、急速に先進国化していき、その先には日本と同じように成熟国家となっていくことであろう。
先に少子高齢化の成熟国家になった日本がいち早く「課題先進国日本」として、スポーツで教育や労働、高齢化などの問題を解決していけば、そのソリューションを欲しがる地域は自然と増えていくことになる。
少なくとも、このぐらいの大きなビジョンや成長戦略を持って、企業とスポーツプレイヤーが新しいパートナーシップを組み、お互いが持てるものを先行投資していくことが、今の日本に求められることであると思う。
また、これこそが東京2020の最大の経済的レガシーであると思うのだが、いささか風呂敷を広げすぎであろうか。
今回の提言が、スポーツと企業の新しい関係性を考える何かのきっかけになれば幸いである。
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