PHOTO | 123RF
[Agendaスペシャル] スポーツ・スポンサーシップの幸福なカタチを探る #03

<スポーツ・スポンサーシップ最前線>目的の明確化とPDCAサイクルが鍵【前編】

前回の記事:
日本のスポーツビジネスは、「環インド洋圏49億人」を狙え

 東京オリンピックに向けて、盛り上がりを見せるスポーツ産業。その活性化に向けて、政府も動き出し、2025年までに市場規模を5.5兆円から15.2兆円へと拡大させる方針を打ち出した。

 元来、企業はスポーツにさまざまな形でスポンサードし、その産業拡大に貢献してきた。しかし、経営者の個人的な思いや地元支援といったCSR的な観点も強く、スポーツを自社のビジネスにどう貢献させていくのか、具体的なビジョンを描けていないケースも多い。

 そこで「Agendaスペシャル」では、企業のマーケティング課題をスポーツがどのように解決できる可能性があるのか、そのパートナーシップのあり方を考える。第1弾に続く「識者の視点②」として、ニールセン スポーツ ジャパン 代表取締役の秦 英之氏にスポーツにおけるスポンサーシップの目的と、今後の可能性について話を聞いた。
 

スポンサーシップの目的は6つに分けられる

 日本のスポーツスポンサーシップは従来、実際の効果がどうであれ、スポーツだからと厳しい検証から許容されている側面がありました。

 対して、欧米およびスポーツビジネス先進国におけるスポンサーシップは、明確な目的意識を持ったビジネスツールとして活用されています。ビジネスである以上、いかに最大限活用し、効果を得るかを考えています。
 

ニールセンスポーツジャパン
代表取締役 秦 英之氏

2013年2月 ニールセン スポーツ ジャパン(旧レピュコムジャパン)代表取締役に就任。スポーツスポンサーシップに対する投資価値を同社独自の方法で評価・測定し、日本のスポーツマーケティング市場を開拓。ニールセンスポーツ入社以前は、ソニーにてグローバルクライアントの担当を歴任。その後、米国ソニーに転籍し、FIFA(国際サッカー連盟)とのトップパートナーシップにおけるマーケティングに携わり、ワールドカップをはじめとした数々のFIFA大会におけるグローバル戦略を構築した。Jリーグマーケティング委員も務める。


 スポンサーシップの目的は主に5つあります。

 1つめは、ブランド認知の拡大や「ブランドイメージの向上」。2つめは、「売上への貢献」。3つめは、重要顧客を試合に招待するといった「ホスピタリティ」。4つめは、「社会貢献」。5つめは、社内啓蒙活動やモチベーションの向上、離職防止などの「インナーマーケティング」になります。

 最近ではこの5要素に加え、「ビジネス開発」を目的とするケースも増えてきました。ボクシング選手やトライアスロン選手にトレーニングの提案を行っているRIZAPや、ドイツのサッカーチームに選手のレベル向上を目的としたデータ分析ソリューションを提供しているSAPが、その例です。自社のサービスを活用してもらうことで、新たなニーズを開拓しているのです。

 もちろん目的は一つとは限らず、ブランドの認知拡大を図りながら、社会貢献やインナーマーケティングも狙うなど、スポンサーシップをマルチに活用することでマーケティング戦略に役立てることができます。
目的、効果
(出典:ニールセン スポーツ ジャパン)

 ただし重要なのは、複数ある目的のなかで優先順位を決めること。なぜなら、その優先順位によって、獲得する権利の種類が変わってくるからです。

 例えば、ブランドの認知拡大を最優先とするのであれば、獲得すべきはユニフォームの胸スポンサーかもしれません。また、BtoB企業が、ブランドの認知拡大が不要である代わりに事業展開に役立てたいというのであれば、法人向けホスピタリティに活用できる権利を獲得する。

 つまりスポンサーシップには、権利の獲得よりも前に、目的の整備が重要となるのです。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録