[Agendaスペシャル] スポーツ・スポンサーシップの幸福なカタチを探る #04

東京五輪・FIFAワールドカップのスポンサーシップで、効果を出すために必要なこと【後編】

前回の記事:
<スポーツ・スポンサーシップ最前線>目的の明確化とPDCAサイクルが鍵【前編】

メディア露出とアクティベーションの両輪が重要

 ビジネスツールとしてスポンサーシップを活用するためには、スポンサーとして約束されている露出のほかに、アクティベーションが欠かせません。アクティベーションとは、企業自らがスポンサーであることを消費者に訴求する活動のことを指します。

 というのも、例えばブランドの認知拡大を目的に看板を出していたとしても、ファンはどうしても看板ではなく試合に注目してしまう。そこで、その部分を企業活動で補い、スポンサーシップの効果をより高めるようにするのです。

ニールセンスポーツジャパン
代表取締役 秦 英之氏

2013年2月 ニールセン スポーツ ジャパン(旧レピュコムジャパン)代表取締役に就任。スポーツスポンサーシップに対する投資価値を同社独自の方法で評価・測定し、日本のスポーツマーケティング市場を開拓。ニールセンスポーツ入社以前は、ソニーにてグローバルクライアントの担当を歴任。その後、米国ソニーに転籍し、FIFA(国際サッカー連盟)とのトップパートナーシップにおけるマーケティングに携わり、ワールドカップをはじめとした数々のFIFA大会におけるグローバル戦略を構築した。Jリーグマーケティング委員も務める。

 なぜアクティベーションが重要なのか。それは、スポーツのファンが、同じ対象を応援する企業に対するロイヤリティが高まり、購買意欲が上がると言われているからです。実際に、スポンサー認知者と非認知者の購買率を調査すると、スポンサー認知者の方が商品を購入する傾向が強いという調査結果も出ています。

 アクティベーションは日本では比較的、新しいモデルです。先陣を切っているのがサッカー日本代表のスポンサーであるキリンです。キリンは、キリンカップやキリンチャレンジの開催、勝ちTのプレゼントキャンペーン、サッカーを通じた社会貢献活動など、長年に渡って横断的にアクティベーションを行っています。

 その結果、今ではサッカー日本代表のスポンサーといえばキリンというイメージが定着しています。まもなく開催するワールドカップでも盛り上がりをつくっていくでしょう。
 

東京五輪を効果的に活用するために

 今後は、2020年の東京オリンピックが一つのきっかけとなり、アクティベーションが活発に行われるようになります。その結果、スポーツスポンサーシップ文化の土台が構築されると考えています。

 その理由は、オリンピックにはスポンサー契約時の露出が一切ないためです。ほかの大会では、スポンサー契約を結ぶと同時に露出が約束され、投資すればある程度の露出がリターンとしてありました。しかしオリンピックは、大会ロゴが使えるという権利以外は追加料金になります。

 現在(2018年5月14日時点)、2020年の東京オリンピックのスポンサーは62社集まっていますが、具体的な活用方法を考えずにスポンサーになり、持て余しているケースも起きていると聞きます。

 マーケティングファネルの流れから考えると、最初に達成すべき目的は、スポンサーであるという認知拡大です。より多くの人にリーチできるという意味では、テレビCMが最も有効的と考えられています。

 しかし2016年のリオオリンピックの際は、スポンサー各社が大量にテレビCMを打ったにも関わらず、期待された効果が出ないケースもありました。それは各社のクリエイティブが同じ構成だったため、差別化できなかったことが原因でした。

 一方、2012年のロンドンオリンピックで大きな市場を築いたと言われるP&Gは“ThankYouMom”というキャンペーンを打ち出し、ターゲット層である「お母さん」という要素とオリンピックの要素を組み合わせたテーマにしました。
 


 そのことでP&G社のメッセージが分かりやすく伝わり、他のスポンサー企業と差別化を図ることに成功しています。また、テーマを掲げることで、アクティベーション戦略の方向性が一本化できるという利点もあります。
 
 最近は、日本でも同様に企業独自のテーマを掲げたアクティベーションが行われ始めています。例えば、ニッセイは「Play,Support.」というコピーで、東京オリンピックのスポンサーであることを訴求するテレビCMを制作しました。
 
出典:日本生命ホームページ
 
  “Play,Support.”というコピーを掲げるメリットは、オリンピックに限らず、どんな大会でも同じコピーが使用できることです。つまり、ニッセイがこのコピーをスポーツの応援に使用しているという認知を広げることができれば、ニッセイがオリンピックのスポンサーであることが自ずと認知されるようになるのです。

 もちろん、公式スポンサー契約を結んでいない企業が無断で広告やキャンペーンに活用するアンブッシュマーケティングは行ってはいけません。しかしニッセイのようにスポーツスポンサーシップで横断的に一貫したメッセージを発信することで、より効果的なアクティベーションにつなげることができます。

 今回の東京オリンピック開催に際して内閣府が打ち立てている「beyond2020」というプログラムも有効でしょう。東京オリンピックのスポンサーであるかどうかに関わらず参画できるため、このプログラムを利用したプロモーションを行えば2020というワードからオリンピックを連想させることができます。あたかもオリンピックを応援しているようなイメージが訴求できるわけです。

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