[Agendaスペシャル] スポーツ・スポンサーシップの幸福なカタチを探る #05

スポンサー企業は、スポーツの効果をどう見ているのか【日本コカ・コーラ×コーセー対談】

前回の記事:
東京五輪・FIFAワールドカップのスポンサーシップで、効果を出すために必要なこと【後編】

 企業のマーケティング課題をスポーツがどのように解決できる可能性があるのか、そのパートナーシップのあり方を考える「Agendaスペシャル」。第3弾では、スポーツに対してスポンサードしている日本コカ・コーラ オリンピック&エクスペリエンシャルマーケティング担当 統括部長の渡邉和史氏と、コーセー 宣伝部 宣伝企画・PR課課長の小林祐樹氏に、スポーツをマーケティングにどのように活用しているのか聞いた。

グローバルコンテンツがコカ・コーラを世界ブランドに

渡邉:日本コカ・コーラが取り組んでいるスポンサーシップは大きく、グローバル、ナショナル、ローカルの3つに分けることができます。

 グローバルはアトランタにある本社が主体となってIOC(国際オリンピック委員会)や、FIFA(国際サッカー連盟)と契約しています。その一環で各国が、その権利を使って戦略を練り、具体的なアクティベーションを展開します。

 一方でナショナルは、日本コカ・コーラが主幹となって、日本全国の視点からアスリート支援や大会に協賛しています。ローカルは、販売会社であるボトリング会社が地域貢献や法人契約の増加を目的に、日本国内の地域レベルでスポンサーになる活動です。

 そもそもコカ・コーラ社がオリンピックと最初に契約したのは、1928年のアムステルダム大会です。そしてオリンピック初の公式スポンサーでもあります。当時の戦略は1886年に米国でブレイクした「コカ・コーラ」を世界に広めるためでした。世界中から選手が集まるオリンピックで「コカ・コーラ」を話題化させ、それを自国に持ち帰ってもらう狙いです。今でいうインフルエンサーマーケティングですね。グローバルで通用するコンテンツやアセットを持つことで、「コカ・コーラ」ブランドを世界に浸透させていく戦略です。 

渡邉和史氏
日本コカ・コーラ 東京2020年オリンピックチーム

1974年生まれ、カリフォルニア州サンディエゴ出身。高校卒業までアメリカと日本を行き来し、上智大学へ入学。卒業後、博報堂に入社。南米のサッカーの大会のマーケティングを代理店の立場として従事。2002年のFIFAワールドカップはFIFAマーケティングに在籍し、連盟側としてスポーツコンテンツを体験する。2011年からは日本コカ・コーラにてスポンサー側としてFIFA・IOC・選手契約等の部署を統括し、全立場からスポーツマーケティングを把握している存在である。現在は東京2020年オリンピックチームに所属している。

 

フィギュアスケートとテレビCMを連動するコーセー

小林:コーセーはフィギュアスケート、ゴルフ、マラソンなどの団体や選手とスポンサー契約を結んでいます。その目的の一つは、社会貢献。利益の一部をスポーツの発展に還元するCSR的な動きです。一方で我々宣伝部としては、スポーツをコンテンツとして最大限にマーケティング活動に活用しようと考えています。

小林 祐樹氏
コーセー 宣伝部 企画・PR課 課長

オリコムで営業として通信、飲料、教育、出版など様々な広告主を担当。2010年コーセー入社以来コミュニケーション分野に従事。雪肌精、ファシオ、スポーツビューティなどのプロモーション企画、電波・デジタルメディア買付、CLUBKOSE(会員組織)運営、フィギュア・ゴルフなどのスポーツマーケティングを担当。2018年より現職。


 特に力を入れているフィギュアスケートは、日本スケート連盟・世界スケート連盟へのサポート、世界選手権・グランプリシリーズなどの複数の大会への協賛に加えて、中継時のテレビCMや選手契約も展開しています。

 当社のスキンケア商品「雪肌精」の女性への認知率は約90%にのぼるのですが、フィギュアスケートを視聴している女性ではその数字は70%程度しかいません。視聴者の中心がブランドコアターゲットであるF1ではなくF2やF3であることも要因ですが、テレビCMを展開した結果、購入意向が1.2倍に上がったデータもあります。これは世代を超えた方に愛されるブランドを目指す雪肌精には重要な事実です。



渡邉:そんなに上がるとは、すごいですね。日本コカ・コーラも2009年から2015年までJリーグのスポンサーをしたのですが、その目的は30~40代男性に「コカ・コーラゼロ」の浸透を図ることでした。彼らを分析した結果、「サッカーが好き」「Jリーグを見に行く」といった行動が見られたためです。現在はスポンサーしていませんが、これらの活動で狙いが達成できました。我々もスポンサーをする目的は、あくまで課題の解決にあります。

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