マーケターズ・ロード 足立光 #03
「マーケティング一筋では、いずれキャリアに限界がくる」日本マクドナルドCMO足立光氏
ヘンケルを辞めて、ワールドへ転職
日本を含む北東・東南アジアの代表を3年間務め、ヘンケルではこれ以上の新しいラーニングや経験値を得られないと感じていたこと、また自分のスキルを活かして日本企業に貢献したいという思いが強まっていたことから、2013年に執行役員 海外本部副本部長としてワールドに至りました。元ローランド・ベルガーの同期で日本航空の副社長も務めた水留(浩一)さんが専務執行役員に就いていて、誘っていただいたという経緯があります。
主な仕事は、事業開始から30年以上経つのに赤字続きだった海外事業の収益改善(黒字化)と、本社社員を1800人から1300人に削減する人員整理のお手伝いでした。現地調達・生産の比率を上げ、不採算店を閉じることで順調に収益改善は進み、2年の契約を満了して、人員整理の対象となった最後の方々と一緒のタイミングでワールドを去りました。
ブランドマーケターからスタートし、戦略コンサルタントを経て、経営者に。この経歴は、マーケターのキャリア形成における、ひとつの有効なパターンと言えるのではないかと思っています。
マーケティング一筋では、いずれキャリアに限界がやってきます。セールス(営業)やインフラ(サプライチェーン)について知らずして、いちマーケターを超えた、企業全体を見渡すポジションへと上がっていくことは難しいと言わざるを得ません。
複数の企業のマーケティング責任者を歴任することをキャリアのゴールとしないのであれば、また自分のキャリアのゴールとして経営者になるという選択肢を残すならば、他の業界や企業のこと、そしてマーケティング以外のファンクション(機能)をできるだけ早いタイミングで学んだほうがいいと思います。
マーケターが経営者を目指すことを、私は必然性のあることだと考えています。
マーケティング戦略の次に、経営戦略がある
それは、私が「マーケティング戦略の次に、経営戦略がある」と考えているからです。一般的には逆で、「経営戦略の次に、マーケティング戦略がある」と理解している人が多いですよね。でも、それは間違っていると思うのです。マーケティング戦略とは、「どうやって売るか」「ビジネスをどこでどうやって伸ばしていくか」、言い換えれば「お客さまにどんな価値を提供するか」を考えることです。そして、そのゴールに到達するために、インフラ戦略や営業戦略やIT戦略を立てます。それが経営というものです。
マーケティングが先立たなければ、どういう組織をつくればよいか、どういうITインフラを構築すればよいかを決めることはできないのです。
また、ジェネラルマネージャーを目指すと、キャリアの選択肢が広がるというメリットもあります。いわゆる「マーケティング」が必要とされる会社は、必ずしもそう多くありません。銀行、証券、保険、小売り、アパレルといった業種にはマーケティング部門がないことのほうが多いのが現実です。つまり、マーケティング専門人材の需要は非常に限定的と言わざるを得ないのです。
その点、経営はすべての企業に必要なものですから、需要は企業の数だけ存在すると言えます。
マーケティング人材は、「マーケター」という名前に固執するより、経営者を目指したほうがずっと面白いと思います。経営とは、「究極のマーケティング」ですから。
次回、「足立光/日本マクドナルド時代(現在)」はこちら
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