顧客基点の「ソーシャルメディア戦略」 #11
「#エアJリーグ」知っていますか? 新型コロナで感じたハッシュタグの力
- 前回の記事:
- SNS無期限禁止は、お客さんとの対話を遮断する表明である
制約があるからこそ生まれるアイデアたち
筆者が学生時代に音楽制作を始めた1980年代後半、アマチュア音楽家が使うシーケンサー(自動演奏ソフトのようなもの)は8トラック、MTR(マルチ・トラック・レコーダー)はカセット4トラック、1台のシンセサイザーの同時発音数は8音が主流だった。
そこから30余年が過ぎ、HDR(ハード・ディスク・レコーディング)が中心となった現在では、トラック数は無制限、シンセサイザーは128音を超える同時発音数が基準になるなど、当時の環境を知る者からすると隔世の念を感じざるを得ない。しかしながら当時は、制約があったからこそ生まれたアイデアや工夫もあふれていた。
新型コロナウイルスが感染拡大した、この1カ月間の制約/抑制された日々の中、SNSでもこんな現状だからこそ、同じ志を抱いた人たちの発想力と願いが込められた取り組みの数々を見出すことができる。
タイムラインで繰り広げられた熱戦
スポーツ界でいち早く公式戦の延期を発表したJリーグ。開幕直後のシーズン中断は、筆者も含めサポーターたちには寂しい現実ではあったが、Twitterでは中断直後から「#エアJリーグ」と呼ばれるハッシュタグでの仮想試合が繰り広げられた。
とりわけ、2月28日の「#エア明治安田生命J1リーグ鹿島vs神戸」は、Jリーグ(@J_League )を始め、鹿島アントラーズ(@atlrs_official )、ヴィッセル神戸(@visselkobe )などの公式アカウントも積極的に参戦。
試合前のスタジアムグルメ情報で腹ごしらえし、佐藤/家元/西村氏を中心とした審判団の下でキックオフ。
イニエスタ選手や上田選手の活躍までは想定内、度重なるVARや過去の記録を超える得点数、アクセス過多でDAZNが不安定になったり、エンドレスなアディショナルタイムのため終電に乗り遅れるサポーターが発生するなどのアクシデントもあったが、「現実と愛」に溢れた妄想が融合する歴史に残る一戦となった。
そもそもリアルタイム性が高いTwitterとスポーツの相性はとても良いが、前後半の尺と試合開始時間が決まっているサッカーは、複数人数でタイムラインの共有を味わうのに最適な競技だと言える。
シーズン再開に向けては一進一退ではあるものの、サポーターたちの想いと願いを込めたSNSでの熱戦の数々は、Jリーグの歴史に刻まれるに違いない。