顧客基点の「ソーシャルメディア戦略」 #12
コロナ禍で地方企業のSNS利用が進む、発信力と連携力を見方にしよう
企業SNSの新たな活用方法の兆し
新型コロナウイルス感染拡大防止のため在宅時間が増えたことにより、インターネット、そしてSNSの利用が急増しているという報道をしばしば目にするが、SNSに接触しすぎることが、自らを抜け出せない暗雲に押し込めてしまう負の面があるのも事実だ。
しかしながら、企業SNSを応援する目的の本連載では、前回に引き続き、この困難な状況の中だからこそ見出すことが出来る企業SNSの新たな活用方法の兆しを紹介したい。
ポジティブな声が企業の行動を後押しする
今回のテーマを執筆するきっかけになったのは、アジェンダノートでもお馴染みの郡司昇さんがFacebookで紹介していた、サツドラ公式Twitterが投稿した、マスク販売の開店時中止を告知するツイートだった。
本件の経緯などについては、郡司さんとサツドラ富山社長によるこちらの対談に詳しいが、企業SNS担当者として注目するべきは、同ツイートに寄せられたコメントの数々だ。
英断と呼ばれるような企業の行動に対しては、当然賛否どちらの声も寄せられるが、約200コメント(筆者集計)の内訳としてネガティブなものは数件、抽選販売やネット販売などの要望が2割弱、残りの8割強が「ありがとう」といった感謝の言葉や従業員の方たちを労う声が並んでいる。
SNSの成果はリツイートやいいね数に目を向けがちだが、以前も述べたように「SNSは顧客のポジティブな声を可視化する装置」でもあることを、この投稿が証明してくれている。
力強い企業姿勢の発信があっての反応であることはもちろんだが、「発信」だけでなく、顧客の声に「耳を傾ける」大切さを、私たち企業SNS担当者に再認識させてくれる事例でもある。
筆者はよく、自社からの発信をSNSのA面、リプライやエゴサーチなどで得られる顧客(フォロワー、ファン)の声をB面と表現するが、SNSで顧客と企業の関係性を深める上では、優先度がA面→B面の順ではなく「両A面」だと意識することが、SNS運用で大事な考え方になるだろう。