Adobe Summit 2020 レポート #02Sponsored
2020年以降のビジネスに影響を与える、6つのマーケティングトレンド【奥谷孝司 Adobe Summit解説】
顧客体験設計における近未来的構想を深堀り
前編においては、これからの時代の顧客体験設計に向けて企業が備えるべきことを、2020年のAdobe Summitから読みとれるキーワードをもとに筆者なりに解説させていただいた。
今回の後編では、これからのお客さまとの繋がり方とマーケティングトレンドという現状、多くの経営層やマーケターが余裕を持って見据えられていないと思われる未来についての考察を行いたい。その上で、必見なセッションが2つある。
ひとつは調査会社IDCのAlan Webberによる、CXM(カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント)の現状と効果的なCXM戦略を構築し実行するためのノウハウを解説するセッション。
2つ目は、McKinseyのデジタルマーケティングオペレーション&テクノロジー部門のグローバルリードでパートナーでもあるJason Hellerと、アドビのマーケティングおよび顧客インサイト担当バイスプレジデントのJohn Copelandが行った今後12~18カ月の間にビジネスに大きな影響を与えると思われるマーケティングトレンドを解説したセッションだ。残念ながら後者は英語のセッションだが、いつか日本語字幕をAdobe Japanにつけてもらいたい。
Adobe Summitの良さは彼らの視点からだけの知見を共有する場ではなく、さまざまな事業会社の具体的事例や調査会社による未来考察を提供する点にある。他にも紹介したいセッションは無数にあり、オムニチャネル事例はもちろん、いままさにデジタル活用と、マーケティングが求められているヘルスケア業界の話なども紹介したいのだが、今年はいろんな意味で特別な年であり、いまだからこそ読者のみなさんと深く考えてみたいマーケティングと顧客体験設計における近未来的構想を深堀りしたいと思う。
個別セッションについて質問、アドバイスが欲しい人はぜひアドビを通して小生までコンタクトしてもらいたい。
2020からの「マーケティングトレンド」
最初に、先ほど紹介した後者である、McKinseyのJason Hellerと、アドビのJohn Copelandが行ったセッションの解説を行いたい。
彼らのセッションのタイトルは、5 Marketing Trends That Will Impact Business Most In 2020 — and Beyondであった。つまり、ポイントは5つあるということだが、実際のセッションでは6つあった。
その理由はまさにコロナ問題が顕在化したタイミングでのサミット開催に合わせて、内容が追加されたわけだ。このような臨機応変さと、迅速な洞察力はオーディエンスニーズを捉えており、さすがである。そして、最初から用意されていた5つももちろん示唆に富んでいる。ここからその6つについて筆者の解釈も加えながら説明していこう。
1. コロナウイルスの影響がある中でも回復⼒(Resilience)を高めよ。そして、ブランドの⽬的を見失うな。
「Resilience」という言葉をみなさんはご存知だろうか? 英語サービス「英辞郎 on the web」によると、「病気・不幸・困難・苦境などからの回復力、立ち直る力、復活力」とある。
もともとは物理学が由来の言葉のようだが、プレッシャーを跳ね返すような力と捉えることができるだろう。企業人として我われはこの難局に手をこまねいてばかりいるわけにはいかず、いち早く立ち直る力が求められている。
「レジリエンス」、苦難から立ち上がり、BBB(Bring Back Better)を推進する力を身につけねばならいのだ。そして、忘れてはならないのはみなさんの働く企業の創業、起業目的は何だったのかを今こそ見直すことだ。ここからずれることがないように企業経営を進めていかねばならない。
その際に彼らが提唱していることが、まさにクリステンセンが提唱するジョブ理論でも強調される「顧客の課題を理解し、それを解決すること」である。そのために今のような時こそ事業ドメインにとらわれることなく、お客さまが求める顧客経験を広範囲に捉えて、顧客中心主義で事業を進めていく必要があるという。
企業は今こそ、どのようなメッセージ、サービスをお客さまが求めているか考えてもらいたい。そして、より良い顧客経験のために自社へのアクセス容易性への評価、そして価値の再考がお客さまの側においても進んでいることに敏感になるべきだろう。