顧客基点の「ソーシャルメディア戦略」 #13
「鬼滅の刃」に学ぶ、参加型SNS企画が成功する秘訣
新人SNS担当のみなさんへ
新型コロナウイルスが企業のSNS運用に与えている影響は、「何を投稿するべきなのか?」という有事対応の側面はもちろん、奇しくも年度替わりの時期(3月から4月)と外出自粛要請や非常事態宣言が重なったことで、組織面での影響も大きいだろうと想像する。
多くの企業では新年度は人事異動の季節でもあるので、この春からSNS担当・マーケティング担当に就いたが、テレワーク中心という慣れない環境で十分な引き継ぎや先輩からの指導を受けられず、戸惑っている方も少なからずいらっしゃるだろう。
この連載は、主に事業会社のSNS運用担当のみなさんに向けてお送りしているので、少しでもそのヒントになればと思っているが、有事であろうと、時は過ぎ、世の中の潮流も移り変わっていく。
参加型企画とは、ファンの思いの可視化である
音楽の世界に目を向けると、サブスク発でOfficial髭男dismやあいみょん、YouTube発でYOASOBI、TikTok発で瑛人など、ヒットの基点が変わりつつあり、これらの背景にSNSと深い関連性があるものも少なくない。
筆者はしばしば、企業SNSの運用スタイルを4つの型、(1)発信型、(2)対話型、(3)参加型、(4)シェア型に分類して説明しているが、前述の音楽におけるヒットの潮流も鑑みると、特にTikTokを中心に顕在化される“参加型のSNS運用”の取り組みは、まだまだ可能性を見出せる領域であると言える。
まずは最初の事例として、筆者が無印良品のSNS担当者だった2016年に実施した「MUJI PEN ART CONTEST」を紹介したい。
企画のきっかけは、MUJIのペンを使い、アートと呼べるような質の高い作品をInstagramで投稿しているMUJIファンが多数存在するのを、日々のエゴサーチから発見したことだった。それならばと、そのようなMUJIファンたちが自慢の作品を披露する場を提供しようと、コンテストを実施した。応募条件は、ただひとつ「MUJIのペンを使って描く」のみ。結果、2週間の応募期間中、28カ国から3000を超える作品が投稿された。
ここで重要なのは、このような企画を実施した際に、企業として重きを置くべき評価の視点は何かだ。残念ながら、本企画を実施したことで商品自体の売り上げへの影響はほぼなかった(多少それに期待していたのも事実だが)。
もちろん、投稿数などの定量的な成果も大事だが、それ以上に重視すべきは「ファンの企業に対する思いの可視化」にあると考える。これは、ファンコミュニティとは何か?を考える上でも重要で、企業・ブランド側が意図的にファンを可視化する行為そのものが、コミュニティの可視化でもあると言える。
ちなみに本企画では、参加の接点を作品投稿だけでなく、投稿された作品に投票出来るという“誰もが参加できる接点”を設けたことも、成功要因のひとつであった。