知ってるだけで差がつく、アドテクノロジー「新常識」 #02
ビッグデータ活用が失敗してしまう3つの罠と、AIの可能性【ソネット・メディア・ネットワークス 谷本秀吉】
典型的な3つの失敗、その原因
・1つ目の罠「手段が目的化される」
そもそもマーケティングに活かすための「ビッグデータ」自体がその企業や組織に存在していないにも関わらず、DMPの導入が先に意思決定し、プロジェクトが始動するケースです。これは社内組織を横断するプロジェクトでよくあるケースです。導入を決定した組織と、データを活用する組織が分断されており、本来の導入におけるゴール設定が曖昧なときに起こります。
・2つ目の罠 「分析できる人材がいない」
今日、先端テクノロジーを駆使して膨大なデータを分析する人材(データサイエンティスト)は、日本のマーケティング界で最も枯渇しているタレント(職種)のひとつです。そのような高い分析技術を有する人材確保が進まない中、プラットフォームが先に組み込まれ、あらゆるデータを統合したとしても、そこにある膨大なデータを分析できなければ、それこそ宝の持ち腐れです。それでは、その後のプロセスに控えるシナリオの設計や施策に落とし込む実行フェーズへ橋渡しはできません。
組織内でDMPの定義が曖昧になり、いつしかイメージだけがひとり歩きし、DMPは何でも実現する「魔法の箱」ように思い込まれたりしていると、そのプロジェクトの再浮上はなかなか厳しくなります。
・3つ目の罠「組織の上層部がデータ活用に可能性を感じていない」
実はこの罠が、一番深刻かつ組織内の問題として根深いものがあります。組織の長が先導せず、組織全体がなんとなく業界のトレンドに乗るかのようにデータ活用プロジェクトが編成され動き出してしまうケースです。これは、マーケターが新しいアプローチで成果を上げたいという、組織内の「ヒーロー欲求」から生まれることがあります。そもそもトップが、データ活用に可能性を感じておらず、理解を示していません。そして、そのようなトップは、マーケティングは人(マーケター)の経験による直感を重視するタイプで、これまで経験したことがない、または聞いたことがない新しい概念や手法に懐疑的です。そこで一旦は判断を現場に任せてみても、プロジェクトの進行を傍観するだけに関与がとどまり、トップと現場に距離感が生まれ、その結果失敗に陥ります。
これらの罠の奥にある根本的な要因を考えると、テクノロジーやデータを活かすにも、人の能力次第ということに行きつきます。
ただ高度な能力を必要とするパートをAI(人工知能)に担わせることができれば、データ活用のプロジェクトも行き詰まりがなくなり、本来の活用目的である事業の成長や生産性の向上に活路が見出せると考えます。
AIがマーケティングにブレークスルーをもたらす
AIの真価は、ビッグデータ時代の到来によって、大きなインパクトをもたらすと考えます。ビッグデータは21世紀の天然資源と言われますが、AIがその天然資源をガソリンにし、エンジンをフル稼働させます。AIは疲れませんし、24時間働き続け、パターンを学習します。かつてはビッグデータを統合化しても、そのデータを動かす役割の多くは「人」が担い、それがプロジェクトをスタックさせる原因となるケースが多く発生しました。
結局は「人次第」という問題に帰結してしまっていたのです。データを動かせる人がいないため、そのデータ活用プロジェクトは失敗に終わる、掛けたコストやリソースは全て無駄だったと組織内で判断されてしまいます。
そのような失敗や判断に陥らないためにも、人ができないことは、全てAIに任す発想を持ってみる。そして、そのAI技術が市場に広まることで、ようやく「ビッグデータ活用」の光明が見えるのではないかと思います。
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