顧客基点の「ソーシャルメディア戦略」 #15

昨今の企業SNSの炎上は、残念ながら顧客戦略の不明確さに帰結する

前回の記事:
森美術館と中川政七商店の視点。デジタルの顧客接点は、リアルにどんな効果をもたらすのか?
 

トレンドワードで振り返る2020年


 みなさん、年末の風物詩といえば何を思い出すだろう。

 紅白歌合戦、レコード大賞、絶対に笑ってはいけない24時、ジャニーズカウントダウンなどなど…。


 テレビ好きの筆者の嗜好を露呈するようなラインアップになってしまったが、昨年もご紹介したように、筆者が毎年楽しみにしている年末の恒例行事のひとつが「 #Twitterトレンド大賞」だ。



 一般的によく知られている某流行語大賞よりも世相を反映しているとの声もしばしば耳にするが、新型コロナウイルス関連、「鬼滅の刃」、「どうぶつの森」など、誰もが知るワードから、#検察庁法改正案に抗議します、100日後に死ぬワニ、#sailormoonredraw などのTwitterをきっかけにその話題が拡散された活動や作品など、2020年のTwitterを賑わせたワードが並ぶ結果となった。

 同様に、SNS文脈で一年を振り返るコンテンツとして、新たに筆者の楽しみになったものである「 #TikTok流行語大賞 」もご紹介しよう。

 2020年のノミネートワード30がこちらだ。
 
TikTok公式noteより

 習慣としてTikTokを利用している方たちは、「うんうん」とうなずくお馴染みのハッシュタグばかりだと思うが、TikTokとの接点が少ない方たちにとっては、「???」が何百個も脳内に浮かぶかもしれない。

 今年の結果は、みごと「#きゅんです」が2020年の大賞に輝いた。各ワードの詳しい解説やTicTokのトレンドについては、筆者よりもりょかちさんの方が明らかに適任なので、ぜひお願いしたいと思っている。
 

炎上事例から学ぶべきこと


 さて、ここからは企業SNSの2020年を振り返ってみたい。

 企業の情報発信においても、ここまで苦労したことはないだろうと思える一年だった。

 本連載でも何度か触れたが、「リアル店舗の営業ができない」、「例年実施しているセールが開催できない」、「新商品の発売が予定どおり進まない」など、事業の先行きが見えない中、SNSで「何を投稿したらよいのか」「どのように振る舞えばよいのか」と、悩まれた運用担当者も多いはずだ。

 そのような中、残念なことにこの年末にかけて企業SNSアカウントの炎上のニュースを目にする機会が多い。

 これまで筆者は、あえて炎上をテーマにすることは避けてきた。

 それは、炎上を極端に恐れて「SNSは怖い場」という固定観念を抱かせてしまうのは本意ではなく、事実として企業SNSアカウント自体の発信内容が原因となった誰もが知っている炎上事例など、それほど存在しなかったからだ。

 企業SNS炎上事例と取り上げられながらも、実際は従業員による非常識な行動(いわゆるバイトテロ)、「誤爆」と呼ばれる個人アカウントと企業アカウントの間違いなどが、企業炎上と呼ばれるものの多くだった。

 しかし昨今話題の、玩具メーカーやアパレル企業の炎上事例は、運用担当者ご自身が大いに関わられているだろうと想像でき、「人間誰しも間違いはある」と、かばいきれない事象が多い。

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