業界人間ベム #特別寄稿 #02

あまり知られていない、テレビCMの「到達」実態とは?【業界人間ベム 特別寄稿】

前回の記事:
動画CMの主導権は、テレビとネットどちらが握るのか?【業界人間ベム 特別寄稿 #1】
 

GRPをインプレッションに変換するべき根拠


 前回は「テレビの歴史」と、今後の常時同時配信と4K、8K化のよって起こりうることを整理してみました。動画CMという広告市場での主軸を誰が握るかが民放テレビの命運を決めることになりそうです。

 その主軸とは、「まずどちらから“押さえるか”」ということになります。従来のマス広告キャンペーンはテレビCMのクリエイティブを選ぶところから始まります。その他のメディア用のクリエイティブは、テレビCMの副産物でした。

 このプロセスが逆転する可能性があります。つまりコミュニケーション開発の起点が、ソーシャルメディア施策やデジタル広告に移り、テレビも使うがそのクリエイティブはデジタル領域での検証を経て取得できたデータからつくられるようになるということです。この場合、主体はデジタルです。それゆえにテレビCMの枠の取り方も、今までと変わります。

 この主軸をテレビが押さえるために、その前提としてテレビにはどんな強みと弱みがあって、デジタルとの補完や相乗効果の醸成をどのようにつくらないといけないのかを探ってみましょう。

 そのために、従来のテレビ(特にスポット)の買い付けではどんな到達実態になっているかを見てみます。その視点は、次の3つです。
 
①    テレビスポットの到達実態(到達人数・表示回数・ターゲットリーチ効率・フリークエンシー分布)

②    エリアによる、ひとり当たりの到達コストの違い

③    年齢層による認知効率の違い(ターゲット×フリークエンシー)

 まず①から見ていきましょう。テレビスポットの場合、既存の視聴率データを元に視聴率合計をGRP(グロス・レーティング・ポイント)として買い付けますが、これは実際に獲得できる視聴率(アクチュアル)を保証するものではありません。

 ただし、レポートはされるので、発注GRPに対して実際に取れたGRP(達成率)が算出できます。また個人視聴率ベースに、各ターゲットの獲得GRPも広告代理店はレポートしてくれるでしょう。一方で、基本的には%を足し上げるという実に不思議な指標になっているので、これだけでは到達実態は見えてきません。

 このGRPという指標は買い付け単位ではあっても、なかなかマーケティング指標にはなりにくいと言えます。特に若年層の人口が減っている今、例えば20年前と今では20代男女の人口は3分の2近くになっています。

 つまり、母数が減っているのに、率を指標にするのは間違っているわけです。20年前と比べれば到達する絶対数として母数が減っているのですから、当然2/3になりますが、GRPとしては同じになります。

 ベムはこれを改めるべく、GRPを表示回数(インプレッション数)という絶対値に変換して管理することを提唱しました。これは世帯視聴率から個人視聴率への流れによって、より正当化されました。

 これであれば、トータルでもターゲットごとでも到達人数や表示回数が把握できます。また地区ごとのインプレッション数を足し上げることができます。従来関東500GRPに、関西400GRPは母数の違う%なので合算できません。しかし絶対数値であるインプレッション数であれば足し上げることができます。

 Googleなどデジタル広告のほうがe-GRPなどという概念で指標化しようとしましたが、私は逆にテレビのGRPをデジタル広告のインプレッション数に直したわけです。このような指標で分析した事例を紹介しましょう。

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