業界人間ベム #特別寄稿 #04
テレビ局が生き残るために、ベムからの7つの提言【最終回】
コンテンツの「質」と「価値」を上げる
今回で連載「テレビはどうなる?」は、最終回です。そこで処方箋とも言える「テレビ局がすべき7つのこと」を書きたいと思います。
その前に、まず動画CM市場をテレビとデジタルで俯瞰して見てみます。YouTube広告は全世界で売上2兆円以上もあり、日本のテレビ広告費を超えています。しかし、そのCM挿入手法はかなり「エイリアン広告」型で、ほとんどがスキップされますが、あまりに頻繁になるとスキップすら鬱陶しくなるでしょう。また、コンテンツは玉石混交で、広告主は質の悪いコンテンツ内に挿入されるリスクをもっと検証しないといけないでしょう。
一方、テレビ放送はいくら番組の質が落ちたと言われても、広告主がCMを入れることをリスクと考えるほど落ちてはいません(一部偏向していると言われる報道系番組はありますが・・・)。また、CMの挿入には長年かけて視聴者に受容されてきた歴史があります。
例えば、ベムは視聴質データでCMに入った時のアテンションインデックス(画面注目率)を確認したことがありますが、通常番組より1社提供番組の方がCMのアテンション率が高いのです。これは1社提供番組ではCMも番組の一部として(ある意味でのネイティブ広告として)認識されているからだと考えます。この現象を深堀りすると、テレビ局は番組に連動したネイティブCM(一部ではやっていますが)をもっと制作するスキルを身につけなければなりません。
基本的にデジタル勢に対抗するにはコンテンツの「質を上げる」、広告枠の「価値を上げる」が対策です。量より質です。これからは質をデータが立証してくれます。キーワードは「コレクトコンテンツ&コレクトビュー」です。
「量」で勝っているうちに、するべきこと
さて、動画CM市場におけるテレビとデジタルを俯瞰した時の「量」(CM在庫量)ですが、テレビCMは関東地区で4週間に約1200億インプレッションに到達しています。関東1都6県の人口は全国の34.1%なので単純計算ですが、全国では約3500億インプレッションある勘定になります。安心して広告掲載できる、これだけの動画CM枠はデジタル上にはまだありません。
デジタルには在庫がないのです。ですからテレビは同時配信枠も質の高い枠として、積極的に配信専用CM枠にターゲット配信商品を開発して価値を上げなければなりません。ところで今のTVerのアドサーバーはひどいですね、15秒CMが回る前に15秒以上スタックすることがあります。早くもっと良いスペックのアドサーバーに変えないといけません。
そしてテレビ放送のCM枠を減らすことです。有限な枠としても価値を保つには需要を供給が上回ってはいけません。まだ「量」で優っているうちに「質」で絶対負けないあらゆる手を打つべきです。これが処方箋を書くためのベーシックな考え方です。
では、「テレビ局がすべき7つのこと」は以下のとおりです。
- 強力なプロCDO(最高デジタル責任者)を招聘して、データで視聴層セグメントとコンテンツ開発ができる人財に入れ替える。
- 放送でのCM枠(特にステーションブレイク※番組と番組の間の枠)を減らす。
- SAS(スマート アド セールス)を普及させ、同時配信枠にも拡張する。
- 番組ネイティブCMを自社制作する機能を格段に向上させる。
- 同時配信に積極的に取り組み、ローカルネットワーク体制維持に拘らない。=同時配信ではしっかり同意をとって視聴者とCMのマッチングを図り、効果的な広告商品をつくる。アドレッサブルCM(視聴者の属性に合わせて個別にCMを届ける)を開発する。
- 制作費を倍増させても回収できるモデルを確立する=放送CM収入や従来のコンテンツビジネスだけで回収しない「紙芝居モデル」開発(後で元を取る)。
- BS放送から撤退する。
それぞれ見ていきましょう。