新・企業研究 #07

【新生・電通デジタル誕生】電通デジタルと電通アイソバーが合併、日本最大級のデジタルマーケティング会社が描く未来

前回の記事:
「建築士のように、企業と消費者とのギャップを埋めたい」インセンス 河野矢薫氏
 電通デジタルは、2016年に電通のデジタルマーケティング支援組織、デジタル広告運用のネクステッジ電通、CRMマーケティングの電通イーマーケティングワンが統合して誕生して以来、デジタルマーケティング領域で強い存在感を放っている。そして、その電通デジタルが2021年7月、グローバルで事業展開する電通アイソバーと合併し、設立5年で2,000人規模の組織まで拡大している。

日本を代表するデジタルマーケティング会社である電通デジタルが今後どのような展望を描いているのか、そして合併の背景にあるマーケティング環境の変化についてどう考えているのか、同社 副社長執行役員を務める杉浦友彦氏と小林大介氏に2回にわたって詳しく話を聞いた。
 

ビジネスの上流から下流まで、統合的なサービスを提供


―― まずは、これまでの電通デジタルからお聞きしたいのですが、2016年に3社が統合して誕生して以来、どのような体制で事業を展開してきたのでしょうか。

杉浦 電通デジタルには、大きく分けると広告・メディア領域と、それ以外のデジタルソリューション領域という事業ドメインがあります。広告領域は私が担当していますが、そこにはメディアという範疇には収まりきらないGoogleやFacebook、LINE、Amazonなど、自社サイトの「外」の生活者との日常的な接点、いわゆるプラットフォームの利活用全般も含まれています。   
    
杉浦 友彦1998年電通入社。Webコンサルティング、インターネット広告、広告効果測定、データを核にした各種ソリューション開発など、入社以来23年間一貫してデジタルビジネスに従事。2004年、電通デジタルの母体となる電通イーマーケティングワン設立に参画。2013年に運用型広告の専門会社(株)ネクステッジ電通を設立、代表取締役社長に就任。2016年に電通デジタルに合流し執行役員に就任。2020年より副社長執行役員として、デジタル広告、コマース、統合デジタルマーケティング事業を管掌。

小林 それ以外のデジタルソリューション領域は私が担当しているのですが、大きく3つの組織があります。DXのコンサルティングを行う組織、データ/テクノロジーのプラットフォーム構築を担う組織、そしてクリエーティブを担う組織です。事業変革やサービス開発から、システムの構築、継続的なエグゼキューションやグロースハックまでを一貫カバーする組織構成になっているんです。
      
小林 大介1996年、電通国際情報サービス入社。2004年の電通イーマーケティングワン設立に参加、2014年より同社取締役。2016年電通デジタル設立、執行役員に就任。2020年より副社長執行役員として、 DXコンサルティング、データ/テクノロジー、クリエーティブ事業を管掌。2021年5月に設立された一般社団法人「UXインテリジェンス協会」の副理事長を務める。

杉浦 この2つの事業は従業員の人数としても、収益としても半々になっていて、電通デジタルでは、当初からこの両輪を発展させながら真の統合デジタルマーケティングを実現していくという方針にこだわっています。世界を探しても似たような会社はほとんどなく、これが電通デジタルの特徴です。
 

電通アイソバーとの統合で、事業のパワーアップを


――今年7月には電通アイソバーと合併しましたが、その背景をお聞かせください。

小林 電通アイソバーは、グローバルで事業展開するIsobarネットワークの一員として、CX(カスタマーエクスペリエンス)にフォーカスしてビジネスを行っていました。クライアント企業が顧客に対してサービス提供する上で、LINEやアプリなど様々な顧客接点を統合的にデザインしてより良い顧客体験を実現することを支援してきました。この数年はEコマース領域に特に力を入れており、たとえば直近ではイオンと独シグナ・スポーツ・ユナイテッドの共同出資会社イオン・シグナ・スポーツ・ユナイテッドが運営するオリジナルユニフォーム作成サービス「Outfitter」のECサイトを構築しました。



 「Outfitter」は、ユニフォームにスポンサーのロゴを入れると一般的な価格より10%~最大50%の割引価格で購入できるという画期的なサービスで、優れたユーザーインターフェイスにより、ユニフォームのデザインや色、ロゴ選びなど、フリクションレスな購買体験を実現しています。一方、その裏側では、セールスフォース・コマースクラウドというプラットフォームを活用しており、最新テクノロジーとCXデザイン力が駆使された、電通アイソバーらしいケースと言えます。

 ただ、これからはそこに広告関連のソリューションや、もう少し上流のビジネスデザインなどを合わせてクライアントにご提供した方がもっとスケールの大きい貢献ができますし、また、セールスフォースやアドビを扱うチームなど、電通デジタルと共通する機能も少なくなかったため、合併シナジーが生まれると判断しました。

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