ポスト平成時代の“AIネイティブCxO”量産化計画 #02

AIは、CMOの仕事をどこまで奪うことができるのか?【野口 竜司】

前回の記事:
デジタルネイティブならぬ「AIネイティブ」な経営者の量産こそ、日本に求められている。【野口 竜司】

AIはCMOの仕事をどこまで奪う?

 連載第一回目の「デジタルネイティブならぬ「AIネイティブ」な経営者の量産こそ、日本に求められている」の記事で、従業員業務タスクのAI化について述べたが(詳しくは記事を参照)、CxO業務タスクのAIによる置き換えも例外ではない。今回はCxOの中でもマーケティング責任者の役割を担うCMOの仕事をAIがどこまで奪えるのかについてフォーカスしていく。

 CMOは、CxOチーム内でも真っ先にAIネイティブになるべき存在ではないかと私は思う。技術的観点からいくとCTOやCIOが企業内において、AIに関するリーダーシップを握りそうなものだが、CMOこそAI活用のリーダーとなり、CxOチーム全体を変えていく牽引者になるのが良いのではと思っている。

 なぜなら、AIは様々な分野での変化を企業にもたらすことが予測されるが、AIはその中でもCMOの管掌であることが多く、 “企業と顧客の関係のあり方”を大きく変える可能性が高いからだ。CMOは顧客とのコミュニケーションの円滑化や顧客ロイヤルティを高める立場にあり、企業と顧客の橋渡し的な役目を持っていると言える。その役目を持つCMOこそが、企業内でのAI活用リーダーとなることによって、AI時代における顧客と企業のあり方をもっとも”正しく”再定義できる立場だと考えるからだ。

 なお、諸説あるがCMOの存在は1980年代に登場し、まだその歴史は30年に満たない。デジタル社会の到来や消費者の価値観の変化により、すでにこれまでもCMOの役割は大きな変化を遂げているが、迫り来る「大AI時代」では、CMOのさらに大きな役割のアップデートを求められるだろう。

CMOの3つの役割

 Deloitte Insightの「Redefining the CMO(CMOを再定義する)」という記事がとても興味深い見解を示しているので紹介したい。

 記事の中で CMOを成功に導く主要因について、次のように紹介している。
 
  1. Knowing how to use customer data and analytics (顧客データや、その分析について術を知ること)
  2. Enterprise - wide business mind-set. (エンタープライズな広いビジネスマインドを持つこと)
  3. Being the voice of the customer at the leadership table. (幹部陣の中で顧客の声の代弁者となること)
 CMOは広いビジネス感覚を持ちながら、顧客を理解し、顧客に寄り添わなければいけない立場として定義されているのが分かる。更には深い顧客理解のためにデータとアナリティクスを駆使する実践能力も必要であると定義されている。

 また、同記事の中でアメリカ Wells FargoのCMO Jamie Moldafskyによる「CMOの必要な能力の定義」は次のように紹介されている。
 
The most critical capability of the CMO is to have a profound, deep understanding of customers and their needs and know how to engage with and serve them. This of course involves knowledge of data and analytics.

CMOの最も重要な能力とは、心底深い顧客理解やニーズ把握、顧客を惹きつける体験供給力。もちろんデータ知識や分析力も伴う。

引用:Deloitte Insight / Redefining the CMO
*いずれも日本語訳は本著者によるもの
 
 これらの内容を踏まえてCMOの役割を、次のように概念的に整理してみることにする。それは「顧客インサイト」「顧客体験(CX)の提供」「ビジネス・市場創造」の3つだ。これらはその他にも沢山あるCMOの役割をすべて網羅できているわけでないので、役割の抜粋として捉えてほしい。
 
CMOの3つの役割
 
 「顧客インサイト」は顧客そのものや、顧客のニーズの理解・洞察を指している。「顧客体験(CX)の提供」は、マスやソーシャルコミュニケーションをはじめとした認知接点の管理や、サービス・商品を通じた経験の管理である。また、顧客への製品やサービスの提供を通じた「ビジネス・市場創造」も重要な役割だ。

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