マーケティングは、どこまで人間を理解できるのか #25

企業の「幸福」戦略:快楽的な幸せの提供だけでなくバランスを

前回の記事:
話題になると、なぜ売れる? 他者評価が消費者の主観に与える社会的影響力を解き明かす
 

マーケティングは人の幸福に何ができるのか


 皆さんが幸せを感じるのは、どんな時ですか? 美味しいお酒やスイーツを楽しむ時間、恋人や気の置けない友人と過ごす時間、臨時収入があった時、温泉に浸かってほっこりなど、いろいろありそうですね。こんな瞬間がずっと続けばいいのに、とさえ思えます。でも、もし本当にずっと続いたら、それはそれで幸福な人生なのでしょうか。

 古代ギリシャ、アリストテレスのころの哲学から現代の心理学(脚注1)にも続く、「幸せ」を2つに分けて考えるモデルによると、それだけでは不十分と言えるかもしれません。それによると、先ほどのようなひと時の幸福感は「ヘドニア」(Hedonia)という概念に分類され、もう一方の「ユーダイモニア」(Eudaimonia)と対比的に捉えられます(脚注2)。それぞれの概念については後ほどもう少し詳しく述べますが、まとめると下の図のように、両方が満たされた状態が、満ち足りた人生に結び付けられます(脚注3)。
 

 現代社会は、ストレス社会、閉塞感のある社会などと言われて久しいですが、そんな中で、消費者は何を感じ、何を求め、どう行動していくのか。それに対して企業やブランドには何ができるのか。ヘドニアとユーダイモニアによる幸福(ウェルビーイング)は、これらの問いを検討するうえで一つの手がかりになるかもしれません。これから数回の記事で、順を追って話を進めていきたいと思います。

 まず今回は、このユーダイモニアとヘドニアそれぞれの概念をおさらいし、マーケティングの文脈に結び付けてみましょう。

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