塾長対談 #02

2人が優れたビジネスパーソンになれたのは、「冷めた子ども」だったから? 【足立光×伊東正明 対談】

前回の記事:
足立光×伊東正明 対談:次の時代を担うマーケターは、どう育成する?
 ビジネスから遊びまで勝つ方法を伝授する「無双塾」を主宰する足立光氏、実践を重視したマーケティング研修プログラム「伊東塾」を開催する伊東正明氏。共に塾長を務め、P&G時代の先輩・後輩でもある二人に、次の時代を担う人材はどうすれば育成できるのか話を聞いた対談の後編をお届けする。
 

「この人のここがすごい」を盗む

――お二人には、これまでのキャリアを振り返って、お手本となる方はいらっしゃいますか。

伊東 僕は「この人」というよりも、すべての上司から多くことを学んできたと思います。社内外を含めた色々な人から、エッセンスをつまみ食いしてきた感じですね。例えば、最初の上司である奥山さん(江崎グリコ 常務執行役員マーケティング本部長 奥山真司氏)からは、物事の伝え方を学びました。

また、音部さん(クー・マーケティング・カンパニー 代表)からは徹底的に戦略の考え方を叩きこまれて、早瀬さん(オリオンビール 最高経営責任者CEO 早瀬京鋳氏)からは、誰もやったことがない初めてのことにチャレンジする大切さを教わったと思います。そういう意味では、誰かがロールモデルというよりも、いろんな人の“つぎはぎロボット”になっているイメージです。
伊東 正明
吉野家 常務取締役
P&Gにてジョイ、アリエールなどのブランド再生や、グローバルファブリーズチームのマーケティング責任者をアメリカ・スイスにて担当。直近までヴァイスプレジデントとしてアジアパシフィックのホームケア、オーラルケア事業責任者、e-business責任者を歴任。2018年1月より独立、ビジネスコンサルタント。吉野家 常務取締役。

足立 僕もそれに近いですね。例えば、書類のまとめ方、英語の使い方、プレゼンなど、この人のこのパートがスゴイと思ったことをパラパラと学んでいく感覚です。

「この人がスゴイから(盲目的に)付いていこう」というような自分のモデルケースをつくるスタイルは、自分のキャラクターがなくなってしまうので推奨しません。それに僕は業界をまたいで6回も転職していて、そのうち3回も給料が下がりましたので、こんなモデルケースは他にないでしょう(笑)。

ただ唯一というか、僕はいろいろな会社の社外取締役やアドバイザーを兼任していますが、その部分にはモデルとする人物がいます。僕が大学時代に学んだ竹内弘高先生です。ハーバード大学でMBAを教えながら一橋大学の名誉教授、そして三井物産やオリックスなど十数社のアドバイザーを務めています。そんな竹内さんに少しでも近づこうと、いろいろと取り組んでいるんですよ。
足立光
ナイアンティック アジアパシフィック プロダクトマーケティング シニアディレクター
1968年、米国テキサス州生まれ。一橋大学商学部卒業。P&Gジャパン、シュワルツコフ ヘンケル代表取締役社長・会長、ワールド執行役員 国際本部長等を経て、2015年より日本マクドナルドにて上級執行役員・マーケティング本部長としてV字回復を牽引し、2018年6月に退任。2018年9月より現職。I-neの社外取締役、ローランド・ベルガーのエグゼクティブ アドバイザー、スマートニュースのマーケティング アドバイザーなども兼任。著書に『マクドナルド、P&G、ヘンケルで学んだ 圧倒的な成果を生み出す「劇薬」の仕事術』(ダイヤモンド社)など

――マーケターが何かを学ぼうとした場合、どのような姿勢でいるべきでしょうか。お二人と同じ姿勢を持っていてほしいですか。
 
足立 同じような姿勢を持ってほしいと思いますが、人によって優先していること、求めていることが違うのでやり方を押し付けたりはしません。例えば、飲み会に出席して色々な人と話す機会をつくろうと勧めても、子どもがいて帰らないといけない人にはできません。そうなると、違う方法を考える必要がありますよね。

伊東 僕も足立さんと、ほぼ同意見です。僕は自分が持っているものを全てさらけ出しているので、その中から得るものがあれば、学んでほしいと思っています。

P&Gを退職するとき、関係が近かった3人の部下に「僕はこの会社に何を残せたのか」と尋ねたところ、3人とも違うことを言ったんです。みんなが僕を見ながら、自分にとって必要なものを拾ってくれていたんだな、と分かって嬉しく思いました。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録