RYUKYU note #04

沖縄国際通りに5店舗を構える、「首里石鹸」のユニークな出店戦略

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 沖縄県は土地柄や歴史的背景に本土と大きな違いがあることから、ビジネスの進め方も従来の方法では、うまくいかないケースがあります。連載「RYUKYU note」では沖縄で活躍する経営者やマーケターをバトンリレー形式でインタビューし、そのサクセスストーリーの裏側にある秘話や、沖縄ならではの戦略や課題、未来の成長に繋がるストーリーをひも解いていきます。

 第4回は、スキンケアブランド「SuiSavon-首里石鹸-」を提供するコーカス 代表取締役の緒方教介氏が登場。2016年に1号店をオープンしてから4年で12店舗に拡大、しかもそのうち5店舗は沖縄を代表する観光スポットである国際通りに出店しています。コールセンターとして創業した同社が新事業に踏み切った理由から、ユニークな出店戦略まで詳しく聞きました。
 

会社を支える新事業として「石鹸」の扱いをスタート


――コーカスは2011年にコールセンター事業者として創業し、2016年に「SuiSavon-首里石鹸-」の店舗をオープンし、現在は沖縄発のスキンケアブランドとして高い人気を集めています。そもそも石鹸を扱おうと考えた理由は、何だったのでしょうか。

 その理由は2つあります。ひとつは、たとえ既存のコールセンター事業で大きなクライアントを失ったとしても、会社を存続させられるような軸となる事業が欲しいと思ったこと。もうひとつは、出産や介護などで長期休暇を取得した優秀な社員が、復帰できる場所をつくりたいと考えたことです。というのもコールセンター事業は、たとえ誰かが一時的に抜けたとしても、その穴を他の誰かが埋めてくれる仕組みがあり、長期休暇から戻った社員を以前と同じ場所で働かせてあげられないという課題がありました。
 
コーカス 代表取締役 緒方教介氏

 それで新しい事業を始めるなら、コールセンターとシナジーを出せるものが良いと考えて、物販ビジネスにたどり着きました。私自身、20年前に1年間ほど、国際通りで観光客向けの道売りをしていた経験があって、海で貝殻や砂を拾い、写真立てに貼って売っていたんです。そのときに原価150円程度の商品が1800円で売れる経験をしていたので、物販には自信がありました。

――新事業の商品として、石鹸を選んだのはなぜですか。

 都会から観光客が沖縄のような暖かくのんびりした地域に訪れた際、身体を癒すものを求める傾向にあると感じていました。言葉にするならば、“ナチュラル”や“手づくり”でしょうか。同時に沖縄は石灰岩の島で強い紫外線や暴風雨もあり、植物が自生するには劣悪な環境。そのため、沖縄の植物や果物には、豊潤な栄養分や美容成分が含まれると聞いたことがありました。

 また、販売するスタッフは産休明けのスタッフと決めていたので「親子で使えるもの」を扱いたいと考えました。沖縄の植物や果物の美容成分を活かしつつ、親子で使えるものという条件から石鹸にたどり着くのは、そんなに特別なことでは無かったように感じます。私が子どもの頃に使っていた洗料は、石鹸しか無かったですから(笑)。

 それに、「手づくり石鹸」を親子で泡立てながら唄を歌ったり話をしている感じが素朴でナチュラルで「なんか良いな」と思ったのを覚えています。
 
「SuiSavon-首里石鹸-」石鹸

――現在の「SuiSavon-首里石鹸-」の顧客層も、観光客が多いのでしょうか。



 はい、多いです。店舗のお客さまの割合を見ると、県外の方が8割で、県民の方が2割です。最近は県外の方の2割近くがリピーターなのが嬉しいです。そもそも沖縄はリピート率が高い観光エリアで、毎月訪れる人が少なからずいるんですよ。

 また、売上構成比も徐々に変わり、現在は8割が洗顔料やハンドクリームなどのスキンケア商品で、残りの2割が石鹸です。石鹸の売れ筋商品は、小さいキューブ型石鹸の箱詰めです。こうした数字からも、お土産需要が大きいことがわかります。

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