日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #03
ポカリスエットが「ダンス選手権」で成功。ターゲットの好きなものに寄り添うことから始めよう
私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、その上でその意図や施策の在り方が海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。
実際、日本で話題になった事例の中には、「高校生をクソ難しいダンスに挑戦させる“ポカリガチダンス”」など、海外のトレンドの延長線上にあるものが、少なからず存在しています。今回は、その第3回です。
実際、日本で話題になった事例の中には、「高校生をクソ難しいダンスに挑戦させる“ポカリガチダンス”」など、海外のトレンドの延長線上にあるものが、少なからず存在しています。今回は、その第3回です。
高校生をクソ難しいダンスに挑戦させる“ポカリガチダンス”
今回取り上げるのは、2016年に始まって今なお広い意味で同じ路線を続けている“ポカリガチダンス”の広告コミュニケーション事例です。
ポカリスエットと言えば、1980年の発売以来、イオンサプライ飲料として、知らない人はいないほどのロングセラー商品です。しかしながら、そのことが災いして、10代からは「お母さんが飲むもの」であり「風邪をひいた時にだけ飲むもの」というイメージが持たれていたと言います。
若い人に“自分たちの飲み物”と思ってもらえなくては、こうした商品に明るい未来は望めません。ポカリスエットが10代に的を絞って、広告コミュニケーションを組み立ててきたことは、納得のいく戦略でしょう。
では、どうやって10代に“自分たちの飲み物”と思ってもらうのか?
「水よりも、ヒトの身体に近い水」という強固なブランドスローガンを持つポカリスエットは、そのことを“10代に伝わるような形”でメッセージしようとしてもおかしくはなかったはずです。実際、多くのブランドではそういったアプローチを試みます。
しかし、ポカリスエットは異なるアプローチを試みます。「潜在能力を引きだせ。」「自分は、きっと想像以上だ。」という、商品特徴とは直接的には関係はないが、10代に響くようなキャッチフレーズを開発したうえで、施策のメインに“ポカリガチダンス選手権”というダンスコンテストを据えます。
読者の皆さんも、例えば5000人の中高生たちがダンスを披露した2018年のバージョンなどは記憶に鮮やかなのではないでしょうか?
なぜ商品機能の分かりやすい説明ではなく、ダンスが題材として選ばれたのでしょうか?
それは、ターゲットである10代の「好きなもの」の筆頭がダンスだと考えられたからです。そして、そのダンスを“ガチ”で難しいものとしコンテストとすることで、青春に特有の“仲間との挑戦”という感覚にもコネクト。さらに商品からのメッセージである「潜在能力をひき出せ」にも上手に結びつけます。
ダンスの振り付けは、有名フランス人振付師に“とにかく難しいものを!”と発注し、普通は簡単には踊れるようにならないので、鏡像(左右反転)になっていて修得に励むことができるレッスンビデオも用意したのです。
ポカリガチダンスの代表的な動画は、こちらで見られます。
・ガチダンスfes
・日本縦断 うちの学校のポカリダンス
・レッスンビデオ
5年も続いている、この広告コミュニケーション。ターゲットの「好きなもの」を上手に活用することで、もはや「お母さんの飲み物」と感じる10代は激減しているのではないでしょうか。