アフターコロナ:マーケティングは、どう変わるのか? #特別編

マスクの開店時販売を中止した大手ドラッグストア「サツドラ」英断の背景

 

これからの時代に、企業に求められる考え方


――サツドラに続いて、色々なドラッグストアがマスクの開店時販売を中止しています。一方で、マスクの販売を「店内でずっと待っている高齢者がいる」といった、揶揄するような投稿も見たのですが、そうした事態も起きていますか。

富山 それは起きてはいますが、あくまで少数のレベルです。今回のことは、郡司さんの記事でも書かれていたように、マスクの絶対数が限られているだけにお客さま全員をハッピーにするのは、難しいんです。その中で、なるべく多くのお客さまにハッピーになってもらうために、どこにフォーカスするかが大事だと思っています。

当然、ハッピーな声ばかりが集まるわけではありません。現場のパートさんからは「こんな風に、お客さんに言われて困っている」といった相談もきています。そういう声が出てきたら、その都度、解決策を考えていくことになると思います。

――今回の取り組みを通して、特に学んだポイントを教えてください。

富山 震災など有事のときにも感じたのですが、どうしてもお客さまに100%の対応ができないタイミングがあります。そのときに100%が難しいからと言って、企業側が萎縮してしまうと、かえってお客さまに不信感を抱かせてしまいます。

なので、こちら側の状況をさらけ出して、実施できる対応を正直に行っていくことが、これからの時代に求められることだと肌感覚で感じています。

郡司 ドラッグストアは調査をすると分かるのですが、他業態に比べて差別化ができていないんですよね。各チェーンのオーナーは「ヘルス&ビューティーに特化している」や「社員教育が優れている」と魅力的なワードを発信していますが、どこも似通っています。実際はお客さまからの評価はどこも大差がなく、「家から近いお店がいい」「安ければ、もっといい」という状態です。

ところが、今回SNSを見ていると「感動した。これからは、サツドラさんでしか買わない」みたいな人が出てきているんですよね。サツドラさんのように、きちんと情報発信していることで、初めてドラッグストアが差別化できるのではないでしょうか。

ドラッグストアに限らずですが、こういう危機のときこそ、真摯にお客さんに向き合うことが企業にとって大事なんだなと改めて感じた、素晴らしい取り組みだったと思います。

<参考記事>
北海道のドラッグストア社長から現在の状況とお願い ~そしてコロナが明けたら(富山 浩樹)
買い占め対策。品薄の「マスク」をドラッグストアの優良顧客にだけ販売する方法(郡司 昇)
「マスク先着順」販売の否定で、ドラッグストアの利益と働きがいが向上するかもしれない(郡司 昇)
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