ニュースと体験から読み解くリテール未来像 #24

買い占め対策。品薄の「マスク」をドラッグストアの優良顧客にだけ販売する方法

前回の記事:
なぜ「商品を売らない姿勢」が大切なのか。今夏、日本進出 b8taが明かすビジネスモデル
 

「超高齢社会」への対応にもなる


 前回の記事「『マスク先着順』販売の否定で、ドラッグストアの利益と働きがいが向上するかも知れない」で、数に限りのあるマスクを優良顧客(ロイヤルカスタマー)に優先販売することでドラッグストアの「収益改善」と「従業員の負担減」が両立できる可能性が高いことを書きました。

 この優良顧客を優先する方法論は、新型コロナウィルス騒動の現在はもちろん、世界に類がない水準で少子高齢化が進む「超高齢社会(高齢“化”社会ではなく、すでに超高齢社会です)」の日本において、国内マーケットが年々小さくなることへの対応策でもあります。消費力のある社会人が一気に増えにくい日本では、既存顧客の重要性が、他国以上に年々増すわけです。

 日本企業の多くは、まず今、目の前にいるお客さまをしっかりと「おもてなし」しましょう。筆者の前職であるココカラファインのコーポレートスローガンは「おもてなしNo.1企業になる」でした。そのこともあって、「おもてなし」という人によって認知が違う言葉について考え抜いたことがあります。

 「おもてなし」のひとつの意味として「モノをもって成す」があります。限りあるモノをいかに「(選ばれた)もてなすべき顧客」に対して提供するか…これを考え抜くのも「おもてなし」のひとつだと筆者は考えます。

 今回は、「誰がお店によって優良顧客であり、同じ人にばかり販売していないか」を管理する手法のうち、比較的すぐに実行できる手法について、可能な店舗数が多い順番で紹介します。原稿では、批判を浴びる表現もあるかと思いますが、ひとつの考え方としてご容赦いただけると幸いです。



 

1.    入荷即時の販売をせず時間をずらす


 多くのドラッグストアチェーンの店舗では、夜間に物流センターから商品が納品されます。開店と同時にマスクを販売するというのは、「あるから売る」という状態です。それに対して、この方法はあえて開店直後に販売しません。

 「同じ人にばかり販売しない」を実現するだけなら、これだけで十分です。働いている人が帰ってくる時間帯、納品の品出しが終わってからシフトが厚い時間帯…なんでも良いので、売り始める時間を変えます。

 こういう状況なので、多くのドラッグストア、スーパーでチラシを止めていますが、「◯曜特売」「◯倍デー」といった定常の販促は止めていない店舗が多いです。そういった日にはマスクを販売せず、翌日に回すのも一案でしょう。

 いずれの時間からの販売でも、声の大きい人に言われて「オリコン(納品が入っているボックス)」から探し出すという非効率な作業はなくなります。

 この店舗作業を平準化することは、ドラッグストアにとって非常に有効です。平準化は、作業のムラをなくすために重要な要素で、このムラがなくなることで、従業員への過負荷がなくなり、店舗の品質が安定することで多くのお客さまの期待に応えることができます。

 つまり、従業員と顧客がWin-Winになるのです。
 
拙著『知識ゼロから育てる「事業責任者」のためのEC塾』(発行:翔泳社)より。平準化・標準化・やらないことを決める(Not to do)の効果は、書籍内で紹介しましたのでご興味があればご覧ください。

 ただ、販売開始を開店時間と同時ではなくする手法は、もっとも簡単に同じ人ばかりが買うという不公平をなくす手法ですが、残念ながら「優良顧客を特定して、優先販売すること」ではないので、次の方法を紹介します。

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