日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #09

優香と青木崇高 夫妻が出演、トヨタ新CMに見るイマドキ家族のリアリティ

前回の記事:
日産、木村拓哉さん起用から考えるアンバサダー論。“やっちゃえ”と“ぶっちぎれ”の狭間で
 私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。実際、日本で話題になった事例の中には、海外のトレンドの延長線上にあるものが、少なからず存在しています。今回は、その第9回です。
 

クルマのテレビCMの親子の描き方が変わった


 古くはHondaの「ステップワゴン」の“こどもといっしょにどこいこう。”が有名だが、クルマのテレビCMでは長年、親子関係が描かれてきた。その中でもここ数年、多くの人の印象に残っているのが、トヨタの「VOXY」の父と息子を描いた一連の作品だ。 

 「父になろう。」「俺。父。俺。」「一緒にいようぜ。」「俺はお前の未来だから。」「父にしてくれて、ありがとな。」といったキャッチフレーズで、息子と向き合う父親の姿を描いてきた。

 そこにあるのは父と幼い息子の姿であり、クルマはあくまでも父が息子と少し遠出するためのものだった。その世界に共感したり、憧れたりする層が、購入するクルマが「VOXY」という位置付けだったのだろう。

 それが最近、様変わりした。まず筆者の目についたのは、優香が小さい息子に「出かけよっか、2人で!」と語りかけて、親子デートに出かけるバージョンだ。夜景の綺麗な場所でクルマを停めると息子が母親に「俺はいつでもそばにいるから。」なんて語りかける。母と息子をこんなふうに描いた広告はあまり見た記憶がないし、“男臭かった”「VOXY」が随分と変わったなという印象を持った。
 
【VOXY】TVCM 親子デート 母と息子篇

 調べてみると、優香のご主人である俳優の青木崇高が幼い娘と親子デートするバージョンもあった。家族4人で出かけるのでもなく、父と息子の男臭い親子関係でもなく、日常生活では広範に見られる親子関係が描かれている。今まで広告ではあまり見かけなかったため、ある意味で新鮮だった。
 
【VOXY】TVCM 親子デート 父と娘篇

 プライベートなことで申し訳ないが、我が家でも21歳の息子と母親の2人、16歳の娘と父親(筆者)の2人で出かけることは少なくなく、それは息子と父親、娘と母親、あるいは家族4人での外出とはまた違った、新しい家族関係として悪くはないのだ。

 そんな“イマドキ家族のリアリティ”を描いたテレビCMとして、筆者からするとかなり評価できると思う。

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