トップマーケターが語る2021年の展望 #03

世耕石弘、田岡敬、田部正樹、富永朋信―トップマーケターが語る2021年の展望③

前回の記事:
片山義丈、小和田みどり、鈴木健、鈴木康弘―トップマーケターが語る2021年の展望②
 新型コロナウイルスの感染拡大が私たちの生活に大きな影響を与えています。2021年は、そうした変化にどう対応していくべきでしょうか。トップマーケターが「2021年の展望」を語ります。
 

「勇気」「耐性」「発想力」が求められる素養


世耕石弘
学校法人近畿大学 経営戦略本部長

 コロナ禍において、いつ、どこで、何が起きるか誰にも予測できない時代。マーケティングにおいても、入念に準備をしてきた企画が、突然、実施できなくなることもありえる。そうした場合、即座に中止する「勇気」と、そのメンタル的なダメージを乗り越える「耐性」、さらにはそれを瞬時に好機に変える「発想力」。これらが、この時代にマーケターに求められる素養だと思う。
 

コロナ禍で、どう新規顧客を獲得するか


田岡 敬
日立グローバルライフソリューションズ株式会社 執行役員 CDO(Chief Digital Officer) 兼 Chief Lumanda Business Officer

 コロナウイルス禍により、オフラインでプレゼンテーションを行う機会が減り、BtoCもBtoBもブランド力の強い企業を除いては、新規顧客獲得が難しくなりました。顧客は「よく分からない」となると、ブランド力のある安心安全な商品・サービスを選びます。新規顧客獲得のためのブランドコミュニケーション強化、それがそう簡単に出来ない大半の企業ではオンライン接客/営業力強化が重要になると思います。 

 ブランド強化においては、オンラインでも強い印象を残せる動画の使い方が重要になるのではないでしょうか。オンラインCRMでは、深度より頻度を重視した設計も多かったですが、オフライン抜きで強い印象(深度)を残すには動画が力を発揮します。 

 一方、新規顧客獲得より既存顧客のLTVアップを方針とする企業も出てきて、LTVアップに一番短期で効果的なクロスセル強化、そのための商材獲得のための企業買収も起こりそうです。セールスフォース・ドットコムはずっとやってきていることですが。
 

「DX生産性革命」に挑戦できるかが成長の鍵になる


田部正樹
ラクスル 取締役CMO/ノバセル事業本部長

 2021年は、マーケティングDXへ、待ったなしの1年になると考えます。ご存じの通り、日本の生産年齢人口は10年で10%減少しており、時間あたり生産性もG7の中では最下位です。そこで起きたコロナ禍によって全世代が強制的なデジタル化を余儀なくされています。

 私が考えるDXの本質は、「生産性革命」です。人手不足が解決できない問題としてある中で、マーケティング業界も「DX生産性革命」をしていかないと生き残れないと考えています。1人あたりの生産性、投資対効果を明確にし、企業価値を上げる変数を正しく理解することで、事業会社も代理店も目先の短期的なHowではなく、成長が一時的に停滞したとしても「視える化・データ基盤構築・生産性改善」に挑戦できた企業が中期的に強みを発揮していく。その道が分かれる1年になると思っています。
 

副業・複業の流れに乗ることがマーケターの成長につながる


富永朋信
Preferred Networks 執行役員 CMO

 「人は放っておくと、二者(例えば2020年と2021年)の差ばかり目につくし、そこばかり論じようとする」と考えていますので、変化に着目して語るのは本来好きではないのですが、副業・複業の自由度が上がる、というのは好ましい変化だと思います。

 複業は、業と業の間で相互に化学反応があり、双方向・複方向でアイデアや効率改善の機会が得られます。時間的な制約によって二の足を踏むのはもったいないなく、特にマーケターがマーケティング外の仕事をする、など他の業務と大きな振れ幅をもった分野での複業は大きな成長機会になると考えます。マーケターの皆さんが時流にうまく乗れることを祈りたいと思います。
続きの記事:
中村 淳一、西井敏恭、藤原義昭―トップマーケターが語る2021年の展望④

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