日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #15
「だいすけ!」が印象的なPILOTの感動CM。カテゴリー広告としての秀逸さ
ブランドの個性を強烈に主張した米国REIによるキャンペーン
海外のカテゴリーの広告について考えてみると、すぐに思い浮かぶのが、カンヌライオンズ2016の話題作である「#Optoutside(オプトアウトサイド)」だ。スポーツ用品店チェーンREIによって実施された。オプトアウトサイドとは、“アウトドアに出かけるという別の選択肢”といった意味合いだと考えられる。
米国にはブラックフライデー(黒字になる金曜日)と呼ばれる年末買物商戦の激戦日がある。日本で言えば、年始1月2日や1月3日の感覚だろうか。この激戦日に、REIはなんと全米143店を休業し、1万2000人の従業員に「アウトドアに出かけよう」と呼びかけた。「我われはアウトドアライフを大事にする会社だ。自ら行動で示そうじゃないか」というわけだ。
このREIの行動は多くの消費者に衝撃を与え、テレビ番組で取り上げられ、SNSで拡散された。この事例は、アウトドア用品・アウトドアライフというカテゴリーを買い物と対置させることで、強力に押し出した“カテゴリーの広告”だと思う。
REIのアウトドア用品店としての全米順位は不明だが、「買い物激戦日に全店舗を休業にする」という自らのアクションで、“アウトドアライフに対する本気度”を提示することに成功している。
実際、このREIというチェーン店は、アウトドアライフ実践家が経営していて、もともとアウトドアライフに対する“本気度”が売りのひとつであるらしい。そう考えると、アウトドアというカテゴリーの広告でありながらも、自社のブランド価値を強力に押し出した施策と言うこともできそうだ。
参考:REIの事例は、記事「サントリー『話そう。』自粛生活の中、ブランドの存在意義を示したお手本」でもご紹介しています。
広告やマーケティングの企画を考える時に“差別化”を強く意識することが常識だろう。しかし、差別化ベースの企画では望みづらい“共感”が、カテゴリーの広告では得られる可能性がある。状況によってはそんな風に考えてみては、いかがだろうか。
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