日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #16

縦に読むと「私たちの勝チ」。バーガーキングのマクドナルドへの挑戦広告、海外はもっと過激

前回の記事:
「だいすけ!」が印象的なPILOTの感動CM。カテゴリー広告としての秀逸さ
 私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めています。この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえでその意図や施策の在り方が海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その企画の第16回です。
 

1年前話題になったポスターが広告賞を受賞


 ハンバーガー業界ではマクドナルドが圧倒的なトップで、バーガーキングはいつもチャレンジャーです。これは日本に限らず、本家の米国をはじめ世界各国でも大枠では同様のようです。

 特に米国のバーガーキングは、長年にわたって「マクドナルドへの挑戦」をテーマにした広告コミュニケーションを仕掛け続けていて、そのファンも多く見受けられます。

 米国では以前から「比較広告」と呼ばれる表現手法が盛んに行われ、1980年代にはペプシによるコカ・コーラに対する広告が話題を集めました。当初は味覚テストなどを使った比較表現がメインでしたが、その後は特に比較をするわけではなく、「トップへの挑戦」へと変化していきます。ここでは、そうした広告を“挑戦広告”と呼んでいます。

 一方、日本では比較広告に対する規制が強いため、テレビCMなどで他社製品を画面に出すことは難しく、また、日本人が他社製品を貶める要素を持つ手法を好まないと言われてきました。

 そのため挑戦広告と言えそうな表現はあまり見当たらず、しいて探せば、少し前のペプシの「自分より強いヤツを倒せ」がコカ・コーラを倒せとも読めますが、そこでもライバル社への挑戦は、あからさまには示されていませんでした。

 そんな状況の中、マクドナルド秋葉原昭和通店が2020年1月31日に閉店することになった時、2軒隣のバーガーキング秋葉原昭和通り店が掲示した1枚のポスターがSNSを中心に大きな話題となりました。
 

 参考:バーガーキングの縦読みポスター事例
https://www.daiko.co.jp/daiko-topics/2021/0415100020.html
https://www.daiko.co.jp/dwp/wp-content/uploads/2021/04/210415_Release.pdf

 Thank youと深々と頭を下げる店員のビジュアルに添えられた文章には、「(マクドナルド店が)ちかくにいたからこそ、私たちも頑張ることができました」など、ライバル店に対して感謝の気持ちがつづられています。

 ところが文章の1文字目を縦に読んでいくとそこに現れるのは、「私たちの勝チ」の一文。バーガーキング店は営業を続けることができたのに、マクドナルド店は閉店に追い込まれた、結局は「“私たちの勝チ”だね」と不敵なメッセージが織り込まれています。日本らしい、婉曲な形での挑戦広告だと言えます。

 1日だけ掲載されたたった1枚のこの店頭ポスターは、SNSを中心に大きな話題となり、77万6,855の「いいね!」を集め、売上も前年同月比121.4%を記録する大きな成果をあげたと言います。アドフェスト2021でも、アウトドア部門とPR部門でブロンズを受賞しました。

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