日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #17

広告回避を乗り越えよう。「タウンワーク?」キムタクのおとぼけ全開、芦田愛菜ちゃんも登場のテレビCM

前回の記事:
縦に読むと「私たちの勝チ」。バーガーキングのマクドナルドへの挑戦広告、海外はもっと過激
 私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえでその意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その第17回です。
 

キムタクなら知らないかもなぁ、と思わせる魅力


 テレビCMを長年たくさん流していて、ある程度テレビを見る人であれば知らない人はいないであろう「タウンワーク」。けれど、たぶん知名率80%とか90%とかいっていても、さらに印象づけて、「少しでも活用してもらいたい」というのが課題だったのでしょう。

 そこで起用されたのが、キムタク(木村拓哉さん)と芦田愛菜ちゃんです。映画かテレビドラマの撮影中の休憩と思われる状況。

 「愛菜ちゃんさ、大学生の甥っこが、今バイトを探してるんだけど・・・」と話しかけるキムタク。

 「タウンワークですね」と当然のように答える愛菜ちゃん。そこに「えっ、タウンワークって何?」と返すキムタク。

 「えっ?」(愛菜ちゃん)「えっ、知らないとヤバイ?」(キムタク)

 「ヤバクはないですけど・・・」(愛菜ちゃん)「けど・・・?」(キムタク)というように会話は続き、最後は「バイトは」(愛菜ちゃん)「タウンワーク?」(キムタク)で終わります。

 →今回取り上げたタウンワークのテレビCMは、こちらでご覧いただけます。
 

 このやり取りが秀逸なのは、“押しつけ感”をかなり減らしながら、アテンションを引き、結果的にタウンワークの売り込みに成功しているところです。

 「バイトは」「タウンワーク!」というやり取りは“押しつけ”でしかないけれど、最後に「バイトは」「タウンワーク?」は、ある種の違和感とともに妙に耳に残ります。

 情報に溢れる現代において、「アド・アボイダンス(広告回避行動)」はきわめて一般的な傾向です。米国ではスマートフォン上の広告を非表示にする有料アプリが人気を集め、日本を含めた一部広告主側でも、ターゲティング広告による行き過ぎた頻度の広告表示を避けようとし始めています。

 そうしたアド・アボイダンス傾向に合わせた施策が取りにくいテレビCMでは、表現の内容で“押しつけがましさ”を少しでも減らすしかありません。その努力がこのテレビCMでしょう。

 そして、その役をある種の納得感とともに演じられる有名人は、そうそういません。そういう意味で今回のキムタクの起用は、“当たり役”と言えると思います。

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