日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #31

猛暑で日陰だけを無理して歩くタクシー配車アプリのテレビCMは、20年前のNIKEの名作を思い出させた

前回の記事:
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 私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えて行こうと思います。今回は、その第31回です。
 

毎回笑えるGOのテレビCM、猛暑に日陰を探し求めて…


   9月に入って少しは秋めいてきましたが、今年の夏は暑かったですね。日差しが直接当たる場所を歩いていると、ほんの数分でも汗が吹き出して大変なことになってしまうので、私自身も極力日陰を探して歩くようにしていました。

 そんな体験を思い出させ、「こういうことって、あるよね」と共感を誘ったのが、この夏に盛んにオンエアされていたタクシーアプリGOのCM「GOする!日差しの強い日」篇です。
 
テレビCM『GOする!日差しの強い日』篇

 おなじみ竹野内豊さん扮するベテラン・サラリーマンの「あっついなぁ」の一言で、CMは始まります。もちろんジャケットは脱いで、手に持っています。ふと振り返ると同行している後輩女性(石井杏奈さん)は、ビルの壁に沿うように歩いています。

「何してんの?」と尋ねる竹野内さん。「暑いから日陰を選んで歩いてるんです」と石井さん。「あったま、いいなぁ」と素直に感心して竹野内さんも真似し始めます。

 小さな看板の陰を探してジャンプを繰り返したり、グループで歩く人の陰に入ろうとしゃがみながら歩いたり、涙ぐましい努力を続け、最後はビルの脇を慎重に進んで来たものの、角を曲がると日向になってしまう場所に到着します。

 そこでいつもの決めゼリフ。竹野内さんから「どうする?」の一言があって、「どうする? GOする!」「困った時にタクシーが呼べる」と商品メッセージへと繋がります。最後はGOで呼んだタクシーに乗った二人が「涼しい~~!」と心底救われた感じを出す一言で終わります。

 猛暑の夏の日にありがちな、誰にでも共感が得られる体験を誇張してユーモラスに描き、無理なくサービスの特徴に繋げる、よくできた表現だと思います。

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