日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #32

ムッシッシー♪ ダメな姿になぜか愛着が湧く「ムシューダ」の人気テレビCM

前回の記事:
猛暑で日陰だけを無理して歩くタクシー配車アプリのテレビCMは、20年前のNIKEの名作を思い出させた
 私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえでその意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その第32回です。
 

とぼけた音楽で毎回人気のCM。なぜか音痴な虫が登場


 2018年に始まって以来、特徴的な「ムッシッシー」の歌で人気があり、毎年テレビCM好感度調査の上位に顔を出す、エステーの防虫剤「ムシューダ」のテレビCMシリーズの最新版が妙に気になります。
 

 歌手・女優の高橋愛さんが、謎のキャラクター「ムッシュ熊雄」とともにムシューダを手に現れ、「隠れてるんでしょ!出て来なさい!!」と叫ぶと、タンスやクローゼットから何匹もの虫(虫と書かれた衣装を来た人)が、ムッシッシーと皆で歌いながら出て来るのは、いつもと同じです。
         

エステー ニュースリリース(https://www.st-c.co.jp/news/newsrelease/2022/20220411_001747.html)より

 ところが、あれ?なんか変だぞ!と思うと、高橋愛さんが「誰か、音、はずれてない?」と不審げに声にします。確かに、かなりハッキリとはずれた声が聞こえてきます。

 はずれた声の主を探して、クローゼット内を進む高橋愛さんとムッシュ熊雄。高橋愛さんが、こいつが怪しいとばかりに、一人の(一匹の)虫に顔を近づけると、図星なのか、彼はバレたくないとばかりに顔を背けてCMは終わります。

 広告と言えば、とにかくキレイなもの、カッコいいもの、良い部分を懸命に見せようとするのが通常の中で、この音痴具合は耳につきます。

「ムシューダ」という製品が本来駆除すべき虫のキャラクターを演じている人の、音がはずれるという“ダメところ”をわざわざ取り上げて、気になるインパクトを持たせ、なぜかかなりの愛着までわかせることに成功しています。

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