日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #40

見たことがないものを見せる。広告の王道で話題「宮崎牛 牛肉の富士山」

前回の記事:
森永乳業ユニーク企画「武勇伝聞いてくれる会議」隠れたニーズの発見こそ買ってもらう近道だ
  私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その第40回です。
 

 見たことがない! 和牛の肉で作られた富士山


 和牛関連の賞で、最高賞・内閣総理大臣賞を受賞した宮崎牛。“世界に誇る、最高峰の肉”をメッセージするために、牛肉で4つの世界遺産を表現しました。

「赤富士」という言葉を、ご存知でしょうか。普段は青っぽく見える富士山が、主に晩夏から初秋にかけての早朝に、雲や霧と朝陽との関係から赤く染まって見える現象を指して、そう呼びます。

 2023年5月、新宿駅・渋谷駅・池袋駅・上野駅・川崎駅など(電車内ポスター、そして大阪や福岡でも実施)に、この「赤富士」が大きくあしらわれたビジュアルが現れました。そこに書かれていたのは、「世界に誇る、最高峰の肉。宮崎牛」の文字です。少し近寄ってみると、遠目で赤富士に見えたものが実は和牛の肉で作られていることに気がつきます。いやぁ、これは、見たことがない! 和牛の肉で作られた富士山です。

 さらに「世界遺産by 宮崎牛」の文字とともに、他に3つのビジュアルが並んでいます。それらはピラミッド、グランドキャニオン、エアーズロックであり、よく見ると、和牛(宮崎牛)の肉でつくられていることが分かります。

出典:プレスリリース https://wagyu.miyazaki.jp/

 これは、JA宮崎経済連が行ったフードアート作品で、WebサイトにはPR動画もアップされています。特設Webサイトによると、「宮崎牛は、全国和牛能力共進会において4大会連続で内閣総理大臣賞を受賞」していて、「時空を超えて人々を魅了してやまない世界遺産。宮崎牛も世界に誇れる存在になれるよう、世界遺産にも敬意を払いながら表現」したとあります(作品詳細は、こちらからご覧いただけます)。

 また、「(撮影に使用した)肉はすべて宮崎牛で、トータル110.7kg、総額約150万円(テスト検証含む)を使用して完成」したとの記述があります。メイキング映像を見ると(これがまた面白い!)、撮影後、使用した宮崎牛は、「スタッフみんなで美味しくいただきました」とのことで、実際に美味しそうに食べるスタッフが映し出されています。
 
メイキング映像

「見たことが無い」ものを見せるのは、やはり簡単ではなく、撮影は、生肉を扱うため、「スタジオの温度を下げて撮影、9月のスタジオが真冬の寒さに」なったと説明しています。大勢の人が細心の注意と工夫を凝らして、この撮影に臨んでいる姿を目にすることが可能です。

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