日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #43

打ち解けられないパパの生態を見事に描き切った、あばれる君主演のサントリーCM

前回の記事:
チビッ子には「水に顔を5秒間」も大冒険。優しい目線でジンワリさせるマクドナルドCM
  私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その第43回です。
 

なぜか打ち解けられないパパの姿に共感


 仕事で疲れているのか、あくびを噛み殺しながらベビーカーの子どもをあやす父親(あばれる君)のアップから、そのWeb動画は始まる。隣のベンチにも同じ行動をする父親が。しかし、2人が言葉を交わすことはなく、「無言の父たち」の文字が現れる。

 そこに、母親の1人のナレーション(実はあばれる君の実際の奥さん)がかぶさる。「パパたちの関係は、面白い」と。同じ父親同士で顔も見知っているのに、なぜか打ち解けない父親たちの関係について語っていく。
 
サントリー『無言の父たち』篇(ザ・プレミアム・モルツ)

 その後も、朝の幼稚園、通勤時の自転車、スイミングスクールの付き添い、公園の滑り台などで頻繁に遭遇するにもかかわらず話もしない父親たちの姿が描かれ、「よく見かけるのに、なぜか喋らない」「初めましてでもないけど、知り合いでもない」「パパ同士なのに、どこか気まずい」と母親によるナレーションが続く。幼稚園バスのお見送りのシーンでは、バスが行ってしまってママ友は何人かでお喋りしているのに、父親はすぐに三々五々に散らばって行ってしまう。

 しかし、会社帰りだろうか、マンションのエレベーターで一緒になった父親同士は、相変わらず言葉は交わさないが、小さく微笑み頷き合う。「でも、分かり合っていないかと言うと、凄く分かり合っている気がする」と母親のナレーション。

 最後に「今週も、おつかれです。」という一言が現れ、子どもを寝かしつけた後に、「おつ(お疲れ様の意)」と夫婦でザ・プレミアム・モルツで乾杯をする。そこに「たいへんでしあわせな、私たちの週末に。」というメッセージが掲げられる。

 いやぁ、なんか分かるなぁ。父親って、あんなだよなぁ。と子育て経験のある自分も大きく共感する。そんな大変な子育ての日々には、週末くらいゆっくりと夫婦で「このビールで乾杯しよう!」というメッセージも、納得がいく。このWebCMには、子育て世代からの共感が多く集まっているという。

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