日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #44

批判もあるが、川口春奈のキュートネスで社名を覚えてしまうテレビCMに注目

前回の記事:
打ち解けられないパパの生態を見事に描き切った、あばれる君主演のサントリーCM
  私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その第44回です。
 

昔懐かしいギターの音色で始まる社名変更告知CM


 ♪デデッデッデッデデ♪ ある程度の年齢の人には昔懐かしく、耳について離れないギターのフレーズで、そのテレビCMは始まる。

 1975年の大ヒット曲『港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ』のキメのフレーズだ。原曲では、「あんた、あの娘の何なのさ?」という宇崎竜童によるセリフが続くのだが、このテレビCMでは、女優の川口春奈が作業着のような衣装の胸あたりにあしらわれたNidecという社名ロゴを指しながら、「あんた、ニデックって何なのさ?」と言い放つ。



 このテレビCMで最初に気になったことは、「ダサ過ぎてファン落胆」といったネット上の記事であった。そこにはSNS上にある「時代錯誤というか、ダサ過ぎて見ていて辛い」や「川口春奈さんはもっとCMの仕事選んだほうがいいと思う」といった批判が並ぶ。

 しかし、当方は特に川口春奈さんのファンだというわけではないからか、あるいは時代錯誤のオジサンだからか、まったく悪い印象は持たなかった。むしろ「ニデックって何の会社なんだろう?」と素直に思い、テレビCMの中でも言及されているように「廻すもの、作った」り、「動かすもの、作る」部品系の会社なんだろう、と一定程度の理解を得た。

 創業50周年を機に、モータ事業を中心とする日本電産が社名をニデックへと変更し、その告知を中心としながら、業務内容も知らしめようとしたものだ。連結で従業員数10万人以上、売上高2兆円以上の巨大企業である。

 川口春奈さんのファンからすると「ダサい」かもしれないが、お堅い会社が広く社名と業務内容を知ってもらうための広告としては、かなり成功していると思う。

参考:ニデック社Webサイト https://www.nidec.com/jp/nidec/ (一連のテレビCMは、こちらで見ることができる)。

 テレビCMの中でも川口春奈さんが「このCMは、ニデックのロゴと私のキュートネスで、ニデックを覚えてもらう戦略です」と宣言している。一般消費者ではなく企業を対象とするBtoB(Business to Business)の会社でも、今や自社アピールが必要な時代なのだと言えるだろう。

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