日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #45

日本茶なのにクリスマス? 意表をついたサントリー特茶の屋外広告「8週間前からクリスマス」

前回の記事:
批判もあるが、川口春奈のキュートネスで社名を覚えてしまうテレビCMに注目
  私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その第45回です。
 

SNSで流れて来た広告。お茶のペットボトルがクリスマス仕様に


 筆者が最初にこのアウトドア広告を目にしたのは、SNS上だった。どうみても日本茶の広告なのに、ペットボトルが赤い毛糸の帽子をかぶってクリスマス仕様になっている。ポスター全体の地の色は、クリスマスを想起させるグリーン。よく見ればそれは、対象商品であるサントリー・伊右衛門「特茶」のラベルの色でもある。

 そこに白抜き文字でデカデカと書かれているのは、「なんとクリスマスまであと8週間」というフレーズ。さらに少し小さな文字で、「特茶なら間に合う。(何が?)」という文章も。
 

 それを見て私は「おいおい、おいおい。何が?って、こっちが聞きたいよ。何が間に合うわけ?」と思わず突っ込みたくなった。で、それは送り手側の狙い通りの反応なのだろう。

 一方で、この商品は、俳優の本木雅弘さんと、女優の上白石萌音さんを起用し、「ちょっと高い」けど、「8週目から、体脂肪低減が見られました」というメッセージを伝えるテレビCMを盛んにオンエアしている。体脂肪低減という言い方だが、平たく言えば、「痩せる」「スリムになる」「スタイルが良くなる」ということが暗示されている。事実、筆者の身近でも、最近少し太り気味だという知人女性が、この特茶を飲み始めていた!



 といったことを考え合わせると、冒頭紹介したアウトドア広告が“クリスマスの8週間前”に掲載されたのには意味があり、「特茶なら間に合う。(何が?)」というフレーズも、“重要なイベントであるクリスマスには、少しスリムになれているかも・・・”ということを暗示しているわけだ。

 と、ここまで理解した人がどれだけいたかは定かではないが、しかしこの一瞬理解しがたく違和感満載である表現は、それだけで注目を集めたことは確かで、中には筆者のように内容(8週間でなんらか効果があるのか!)まで踏み込んだ(踏み込まざるを得なかった)人も、少なからず存在したのではないだろうか。

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