「迷ったら、削る」グローバル戦略の描き方 #04

海外の広告・PR賞を席巻、味の素「冷凍餃子フライパンチャレンジ」が評価された3つの理由

前回の記事:
海外展開する商品パッケージに日本語を使う意図とは?現地の顧客を理解する“匙加減”の大切さ
 ユニクロのAIチャットボット 「UNIQLO IQ」や世界中の着こなし・コーディネート情報を検索できる「StyleHint」のコンセプト・開発・UXデザインや、P&G パンテーンのキャンペーン「#この髪どうしてダメですか」などを手掛けてきた高宮範有氏。I&COの東京オフィスを2019年の開設時からリードし、2024年4月にI&CO APACの代表に就任した高宮氏が、I&CO創業から8年で培った実績と、アジア各国のスタートアップ約250社と情報交換する中で見えてきた国境を越えるブランディングに大切なことを解き明かしていく「『迷ったら、削る』グローバル戦略の描き方」連載。

 第4回は、今年アジアのコミュニケーション領域で注目を集めた事例のひとつである味の素冷凍食品「冷凍餃子フライパンチャレンジ」を紹介します。I&COも携わったこの取り組みは、アジア最大級の広告祭「Spikes Asia」で2つのゴールド、アジアを代表する広告クリエイティブの祭典「ADFEST」でグランプリを含む複数賞を、さらに「PR Awards Asia」や「SABRE Awards Asia-Pacific」なども受賞するという快挙を成し遂げました。

 プロモーション活動に留まらず、消費者との対話を通じてブランド価値を高めたプロジェクトについて、大きな反響を生み出したメカニズムを3つのポイントで解説します。
 

「冷凍餃子フライパンチャレンジ」とは?


 まず、「冷凍餃子フライパンチャレンジ」について簡単に振り返ります。このプロジェクトのきっかけは、2023年5月の「味の素冷凍ギョーザがフライパンに張り付いた」というSNS投稿でした。投稿には、餃子がフライパンの底に張り付いた写真とともに「張り付かない」とする同商品の特徴に疑問を投げかけるコメントが添えられていました。

「油も水もいらない」という特徴を売りにしていた商品にとって、この投稿は大きな試練でした。味の素冷凍食品はこの問題に対して真摯に向き合い、同社の「永久改良」という開発理念に基づいて新たなプロジェクトを始動したのです。

 それが、 餃子が張り付いたフライパンを研究し、新商品開発につなげる「冷凍餃子フライパンチャレンジ」です。これは常に研究開発を続け、より良い商品を提供する姿勢が根付いている同社だからこそ生まれた取り組みといえます。

 投稿の翌月、味の素冷凍食品は「餃子が張り付いた」フライパンを募集し、3500個以上のフライパンを集めました。その後、これらのフライパンから取得したデータを基に改良を行い、2024年1月に新しい「ギョーザ」を発表。ひとつの試練から始まったプロジェクトは、その進捗をWebサイトなどで絶えず発信し続けたことも功を奏し、企業の透明性と「永久改良」を続ける姿勢を伝えることにつながりました。

 この取り組みの経緯や詳細は、Agenda noteでインタビューいただいた過去の取材記事をご覧いただければ幸いです。
   2024年1月に、ライオン研究開発本部と共同で、フライパン張り付きの原因究明と対策の検証を実施することを発表。
 
それでは、このプロジェクトが話題になったポイントを「ブランドの本質」「コミュニケーション戦略」「チーム」という3つの視点で紹介していきます。

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