CATCH THE RISING STAR #25
I-neの新ブランド創出に取り組む「フッ軽」若手マーケターが自分の考えを戦略にいれない理由【後藤瑞貴氏】
2024/12/18
- 人材育成,
企業におけるマーケティングの重要性が増す一方、「マーケターの仕事はAIに奪われるのでは」とも囁かれる昨今。そんな変革期に、マーケティング領域で働く若者は何を考え、どう行動しているのか。
Agenda noteでは「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。生まれた時からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第25回に登場するのは「BOTANIST」や「YOLU」など大ヒット商品でビューティー市場に革新を起こしたI-neの新人マーケター、後藤瑞貴氏。転職してすぐ子会社のEndeavour(エンデバー)に出向した後藤氏は、新たなブランド創出の最前線に立つ。「自分の考えを極力いれない」と語り、「フッ軽」を自称する後藤氏の真意とは。
Agenda noteでは「Z世代」と一括りにされがちな彼らの中でも、各企業が特に期待を寄せる「ライジングスター」にフォーカス。生まれた時からインターネットに触れ、テクノロジーやSNSを使いこなす彼らの多彩な思考や行動を探ることで、マーケティング領域の近未来を照射していきたい。
第25回に登場するのは「BOTANIST」や「YOLU」など大ヒット商品でビューティー市場に革新を起こしたI-neの新人マーケター、後藤瑞貴氏。転職してすぐ子会社のEndeavour(エンデバー)に出向した後藤氏は、新たなブランド創出の最前線に立つ。「自分の考えを極力いれない」と語り、「フッ軽」を自称する後藤氏の真意とは。
転職で新規ブランド集団へ
―― I-neには2023年11月に転職されてきたそうですね。どのような経緯だったのですか。
前職は社員十数名ほどの化粧品メーカーに勤めていました。2021年に新卒で入社し、マーケティング職として働いていたんですが、マーケターの交流会に参加する中でI-neの社員と知り合ったのです。I-neが「BOTANIST」などのブランドを展開する会社だとは知らなくて、大手企業がほぼ独占していた市場でシェアを大幅に伸ばしている(※1)と聞いて驚きました。会社のカルチャーや働いているメンバーに魅力を感じ、入社できれば絶対に良い経験ができると思って転職を決めました。
(※1)参考:I-neが2023年ドラッグストアヘアケア市場企業別シェア年間日本1位*を獲得(PR TIMES)
入社と同時に、2023年11月にできたばかりの連結子会社Endeavourに出向しました。I-neはヘアケア商材が中心ですが、Endeavourはスキンケア商品など様々なジャンルの新しいブランドを立ち上げることを目的に設立された会社です。少人数・若手中心のブランドマネージャー集団と言ってもいいかもしれません。既に「PORELOGY(ポアロジー)」というクレンジングバームと、「SKN REMED(スキンリメド)」というドクターズコスメブランドを展開しており、これらのブランドの売上成長と新規ブランド創出をミッションとして働いています。
―― マーケティングには元々、興味があったのでしょうか。
元々は大のテーマパーク好きです。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や東京ディズニーリゾートが大好きで、中学生の頃、テーマパークの写真がたくさん載っていることに惹かれて本屋で購入したのが、USJの立て直しなどで有名な森岡毅さんの著書だったんです。最初は写真だけ見て満足していたんですが、中身も読んでみるとすごく面白くて、マーケティングに興味を持つようになりました。
テーマパークは変わらず好きだったので、アトラクションを製作する側になりたいという思いもあって、大学では機械科に進学しました。テーマパークで接客のアルバイトもしていました。
実際にテーマパークで働いてみると、自分の考えや行動がお客さまの行動や感情に作用することがすごく面白いと感じるようになりました。そこから企画やマーケティングの業務に本格的に興味が湧き、前職の会社に入社しました。
後藤 瑞貴 氏
I-ne APAC戦略&Endeavour室 Endeavourチーム
I-ne APAC戦略&Endeavour室 Endeavourチーム
―― I-neは独自のブランドマネジメントシステム「IPTOS」(※2)や、クラフト・アート・サイエンス(※3)に基づくマーケティング戦略などで知られます。Endeavourも同じ考え方なのでしょうか。
もちろん、I-neの考え方や成功事例を踏まえていますが、Endeavourは、それに加えてメンバー個人の考えや強みを生かしながら新しいブランドをどんどんつくっていこうという集団です。どういうブランドを目指したいかなどは個人によって異なるので、もちろん会社としての基準はありますが、比較的自由度高く、ブランドを動かしていくことが許される環境です。予算規模も大きく、その分、責任を伴って決断しなければなりませんが、とてもやりがいのある、マーケターとして贅沢な環境だと思っています。
(※2)IPTOS:ブランドのアイデア出しからスケールまで段階毎にゲートと独自KPIをつくり、各ゲートでの経験をデータとして貯め、PDCAを高速で回すシステム。経験がノウハウとして蓄積されるため、高い需要予測精度とヒット率を実現できる。(参考:I-ne公式サイト)
(※3)クラフト・アート・サイエンス:I-neの商品開発の軸となる3要素(参考記事:ドラッグストア市場でシェア日本1位獲得、I-neの商品開発責任者が語る好調の背景【執行役員 藤岡礼記氏】 )
―― 「個の力」が重視される環境のようですが、具体的にはどのように業務にあたっているのですか。
まず既存ブランドの利益拡大に関しては、プロモーション、販売戦略、コミュニケーション戦略などを担当しています。Endeavour に限らずI-ne全体で言えることですが、他社や市場の流行にとらわれすぎず、「WHY」「なぜこのプロダクトをつくるのか」「誰のどんな悩みを解決したいのか」を徹底的に調査し、検討します。消費者の声を聞くさまざまなツールを活用してユーザーへの聞き取りを積極的に行うほか、特に美容系の悩みごとはSNSやYouTubeで発信されていることが多いので、こまめなチェックを怠らないようにしています。私の場合、自社製品は自分で使って、使用感も確かめています。
個人的に一番意識しているのは、マーケティング戦略の構築過程には「極力自分の考えをいれない」ということですね。もちろん、ブランドの方向性には個人の考えが反映されますし、データや数値、理論だけで判断しきれないところは、最後は自分で判断しなければいけません。ただ、そこに至るまでは、主観や決めつけを排除して、客観的なデータやユーザーの声、他の企業や業界の事例など、とにかく判断の根拠となる材料を徹底的に集めます。そもそも、根拠の薄いものは「それってどういうこと?」とすぐに社内で質問攻めに遭ってしまいます。
主観的に判断したものは基本的に当たりません。広告施策で「このコピーなら絶対に反応がいいはず」と思って出しても、あまり反響がありませんが、SNSで見たユーザーの悩みごとをヒントにコピーをつくると、良い反応が返ってきます。森岡さんをはじめ、優秀なマーケターはインプットを非常に大事にされており、良いアウトプットは良いインプットから生まれるのだと思います。私だけでなくEndeavourのメンバーは、いろいろな所にアンテナを張って、常に良いインプットをするように心がけていますね。