日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #57
「もし、その商品がなかったとしたら?」ネガティブ面を描いて好感度1位になったUber Eats人気CM
私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その第57回です。
「寒い冬こそ、Uber Eatsで、いーんじゃない?」
いつもテレビは何気なくオンにしているのですが、見るたびに「プッ」と笑ってしまうのが、この1月から盛んにオンエアされているUber EatsのテレビCM「重ね着編」です。
このテレビCMは、仲里依紗・中尾明慶夫妻が出演しており、コタツで暖まりながら、奥さん(仲)が「あったかいもの、食べたいね」というシーンから始まります。夫(中尾)は「外、寒いし、Uber Eatsで、いーんじゃない?」と返しますが、「いや、頑張って食べに行こう!」の奥さん一言で、小さい娘も連れて外に食べに行くことになります。
外に出た3人は、厳しい寒さを警戒して、異様なまでの重ね着をしています。赤、青、黄色、オレンジ、ピンクと、色彩的にも目立つ格好で、混み合ったバスに乗って飲食店へと出かけます。バス停で奥さんが最後に降りて来ると、重ね着で自分の身体の範囲が分からず、先に降りて待っていた夫にぶつかってしまいます。
こちらも重ね着で真ん丸状態の夫は、奥さんにぶつかられた勢いで坂道をコロコロところがってしまいます。そうこうしているうちに、なんとかお目当てのラーメン屋の前まで来ることができたようで、店の前にたたずむ3人。奥さんは嬉しそうに入口から入ろうとしますが、重ね着で異様に丸くなった身体は通れず、悪戦苦闘することになります。極寒の中、外で待ち続ける夫と娘。そこに、無情にも店員の「ラストオーダーでーす」の声が…。
そこに「寒い冬こそ、Uber Eatsで、いーんじゃない?」のナレーションが語られ、大きな文字も現れます。最後は、結局Uber Eatsで頼んだ料理を、暖かい我が家で楽しそうに食べている3人のシーンで終わります。
いやぁ、面白い。面白いし、Uber Eatsが伝えたいことは、十二分に伝わって来ます。実際にこのテレビCMは、CM総合研究所の「CM好感度ランキング」で、2025年1月度の総合1位となりました。寒い冬、町のあちこちで「Uber Eatsで、いーんじゃない?」との会話がかわされて、実際のオーダーに繋がっていそうですね。