日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #57
広告表現は特徴を伝えながらも、珍しい必要がある。見事に実現したサントリー翠のグラフィック広告
私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その第58回です。
改行で小さな「ゃ」から始まる広告が話題
広告コミュニケーションには2つの要素の掛け算が必要です。第一には、商品の特徴など伝えたいことが適切に伝わっていることで、同時に第二の要素として“充分に珍しい”必要があるのです。
「ありきたりではない」と言い換えても良いのですが、これはそう簡単なことではありません。これだけ多くの広告コミュニケーションが「ありきたりではない」の部分でも日々しのぎを削っていて、歴史的にも数々の多大な努力が繰り広げられてきました。新しいと思われた手法も、皆がこぞって取り入れることで、すぐに「充分に珍しく」はなくなってしまいます。逆に、珍しい部分のほうを意識し過ぎると、奇をてらってはいるものの何を伝えたいのかよく分からないことにだって、なりがちです。
今回取り上げているサントリージン翠(SUI)のグラフィックは、「このすっきり、人生かわっちゃうかも。」という縦書きのコピーを、「このすっきり、」「人生かわっち」「ゃうかも。」という3行でレイアウトすることで、適切にメッセージを伝えながらも、充分に珍しい状況を実現し、ネットでの話題化に成功しました。
随分前から言われていることですが、いわゆるトリプルメディア(ペイド、オウンド、アーンド)のうち、ネットを中心とした話題化を指すアーンドメディア(稼がれたメディア)は、広告コミュニケーションを企画するうえで、ひじょうに重要な要素となっています。
参考:杉咲花さん/中島歩さん出演のテレビCMは、こちらで見ることが出来る。
ところで、「上手なダジャレ」は昔から、適切にメッセージを伝えることと充分に珍しいことという、この2つの掛け算を実現する技のひとつとして広告コミュニケーションでは活用されてきました。
このグラフィックにも、「翠っきり、さわや香」「あたしのイチオ翠」といったその系統の工夫も凝らされているのですが、それらの珍しさは充分ではなかったようで、皆が注目したのは改行のほうでした。