日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #59

「紅茶よりTEAにしない?」って、いったいどういうこと!? “ライバルブランドありき”の広告表現で勝負する『クラフトボス 世界のTEA』シリーズ

前回の記事:
広告表現は特徴を伝えながらも、珍しい必要がある。見事に実現したサントリー翠のグラフィック広告
私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えて行こうと思います。今回は、その第59回です。

紅茶もTEAも一緒だろ!と、思わず突っ込みたくなるキャッチフレーズ。どう見ても、ライバルブランドである『午後の紅茶』を意識していそう

 古くは20世紀後半のペプシによる“The Choice of a New Generation”キャンペーンが有名なのですが、自社製品を持ち上げるのに、先行するライバルブランドを持ち出す方法論は、広告コミュニケーションの得意技の一つと言ってもいいほどです。“The Choice of a New Generation”では、コカ・コーラを古臭いものとしてポジショニングし、それに対してペプシは”新しい世代の選択“だと訴えて人気を博し、一時期はシェアが逆転するところまで行ったと言われています。

 いま駅貼りポスター等で盛んに展開しているサントリー『クラフトボス 世界のTEA』シリーズの「紅茶よりTEAじゃない?」というキャッチフレーズを見た時に僕は、すぐにこう思いました。「これは詳しく言うと、『午後の紅茶』より『世界のTEA』が良いんじゃない?という意味だろうな」と。

 ペットボトルの紅茶飲料と言えば、1986年の発売という長い歴史を持つ『午後の紅茶』が、まず思い浮かびます。それに対してサントリーのクラフトボスは、コーヒーのイメージが強く、紅茶飲料としてはまったくの後発組です。

 Webサイト等を見ると、「世界のさまざまな国や地域の“ティー”の文化やレシピからヒントを得て、多様な素材を使ってアレンジ」しているから、紅茶ではなく「世界のTEA」なのだという趣旨の説明が見られます。が、わざわざ一番目立つキャッチフレーズで、“紅茶よりTEA”と謳い、おなじみの宇宙人ジョーンズに加えて、松たか子さん、杉咲花さん・河合優実さん・伊藤沙莉さんの4人の人気タレントで強力に訴求するのは、「“午後の紅茶”対抗!」の意図が強く読み取れると思います。


クラフトボス 世界のTEA『宇宙人ジョーンズ・四姉妹篇A』

参考:「クラフトボス 世界のTEA」シリーズの広告コミュニケーションはこちらで見ることができる。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録