日本の広告最新事例を世界の潮流から読み解く #62
カロリーメイトの最新CMが描く、AI時代の受験生活 ー 令和の「スライス・オブ・ライフ」の好例
私は長年、多くの広告コミュニケーションの海外事例を紹介、その分析に努めているのですが、この連載では、いつもとはある意味では逆に、まず日本の話題作に目を向けて解説し、そのうえで、その意図や施策の在り方が、海外のどんな潮流と関連しているのかについて考えていこうと思います。今回は、その第62回です。
AI活用を真正面から取り上げた、初のテレビCM!?
若年層を中心に、今やAIを活用しない日はない、という人も増えているようです。一般的にはAIといえば生成AIのことなので、わざわざ「生成AI」と言うことが減っているようにも感じます。
もちろんシニアでもAIを使いこなしている人はいるにはいますが、一般的にはあまり追いつけていないシニアが多いのではないでしょうか。
すでに10年以上にわたって受験生応援をテーマにしているカロリーメイトのテレビCM。その最新版は、このAI活用をめぐる息子と父の物語です。
120秒のテレビCMは、眠気をこらえて勉強に励む受験生(坂元愛登さん)が、「有機化学の選択問題つくって」とスマホでAIに話しかけるところから始まります。この受験生にとってのAI活用は、すっかり“新しい日常”となっていて、電車内では「英語の前置詞の問題つくって」と話しかけ、自宅で勉強中には「問題5の(2)解説して」と話しかけ、その度にAIは「もちろんです!」と応える様が描かれています。さらに、模試の結果が思わしくない夜には「眠れないんだけど」とAIに話しかけ、「そういう夜もありますよね」とAIに慰められています。
一方で古いタイプの父親(佐藤二朗さん)がスマホで見ているのは、お笑いの映像です。しかし、塾に行く息子に「頑張れ!」と声をかけて気持ちがすれ違ってしまい、ぎこちなくAIに「頑張れ!以外の励まし方を教えてください」などと聞いてみています。さらには、「そのお父さんの寄り添おうとする姿勢、素敵だと思います」とAIから励まされたり・・・。
最後は受験に向かう息子に、父親は自らの似顔絵を描いたカロリーメイトのパッケージを手渡し、良い感じに見送ることができるというストーリーです。
僕が知る限り、AI活用をここまで真正面から取り上げたテレビCMは、初めてなのではないでしょうか。
僕は1981年にコピーライターとして広告業界に入ったのですが、当時からすでに使われていた言葉に「スライス・オブ・ライフ」というものがあります。日常(ライフ)を切り取り(スライスし)、共感を醸成することで商品への関心と価値を高めようとする手法です。
古くから使われている手法なので、ともすれば古い感じがしなくもないのですが、しかしその“スライスするライフ”が “新しい日常”であるならば、今を描いたCMとしてしっかりと共感を形作れると、強く感じました。
大塚製薬 カロリーメイト「いちばんの味方」篇




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