マーケティングにおけるスポーツコンテンツの価値 #03
【決定版】スポーツビジネスにおける5つのプレイヤー、有益なパートナーの見つけ方(アビームコンサルティング 久保田圭一)
2018/11/27
スポーツビジネスにおける5つのプレイヤー
マーケティングにおけるスポーツコンテンツの活用をテーマとした本連載も今回で3回目となった。1回目のテーマは、共感ストーリーをつくること、2回目は、時間を奪うことの重要性について考察した。今回は、共感ストーリーを創り出して時間を奪う上で誰と組むべきなのか、どのようにエコシステムを構築していくべきなのか、の2点について考察したいと思う。
世の中の変化が急速に進む中、どの業界でも何か新しいことを始めようとしたとき、自社リソースだけで完結させることが難しくなっている。事業に必要となるさまざまな機能は細分化・専門化されている。自社だけよりも外部リソースを活用した方が質の高い商品・サービスを提供できる可能性が高い。スポーツ業界においても同じことがいえる。
では、誰と組むべきなのかが重要になるが、それはどのようにスポーツコンテンツを活用するのかで異なる。とはいえ、スポーツビジネスにおける主要プレイヤーの概観を掴んでおくことは有効だ。簡単に紹介しよう。
※アビームコンサルティングHPより引用
【コンテンツホルダー】
スポーツコンテンツを活用する権利(著作権、肖像権、放映権など)を保有するチームやリーグ、競技団体。スポーツコンテンツを活用して何かしようとするのであれば、コンテンツホルダーは当然パートナーとなる。チームやリーグから権利を買っているメディアや広告代理店、選手の肖像権を管理するマネジメント会社もコンテンツホルダーである。【行政】
スポーツ庁、日本スポーツ振興センター、自治体のスポーツ振興担当部署。スポーツツーリズムという観点では、観光庁なども含まれるだろう。スポーツ行政は、基本的にスポーツ庁のスポーツ基本計画に基づき推進されている。スポーツ基本計画に関連する施策は補助金が用意されているため、とりあえず動向は押さえておくべきである。ただし、筆者がみるかぎり、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けたパフォーマンス強化施策が中心であり、マーケティングに関する補助金は見当たらない。【スタジアム・アリーナ】
スタジアム・アリーナは、スポーツを観る人が集まる場所であり、マーケティング活動には有効な場所となる。国内のスタジアム・アリーナは、ほぼ自治体が所有しており、運営は自治体が選定した指定管理者によって行われている。指定管理者はプロチームのホームスタジアム・アリーナであれば、そのチームが担うことが多い。ただし、スタジアム・アリーナを活用する場合にも、チームと連携すればよいというわけでもなく、施設そのものに手を加えるような話であれば、その施設の設計業者、ゼネコンとの連携も必要となる。なお、施設に手を加える場合、責任分解点の問題が大きく関係者の合意は得られにくい。【スポーツ推進企業】
いわゆるスポーツ用品メーカーなど、スポーツに商品・サービスを提供している会社は勿論ではあるが、この1、2年でそれ以外の企業でも、スポーツに関わりたい企業は増加している。業種は多種多様で、スポーツコンテンツを活用して新規事業に取り組みたい、既存事業を強化したいというニーズがある。何をやるかにもよるが、現在はパートナーを探しやすい環境にある。また、アスリートのパフォーマンス改善の領域を中心に、スタートアップも増加している。マーケティングにおいてスポーツコンテンツを活用する場合、こうしたスタートアップとパートナーになることが有効である。どのように見つけるか、ということについては次節にて説明する。【メディア】
メディアはスポーツ推進企業ともいえるが、スポーツコンテンツ活用では最も有効なプレイヤーとなるため、別枠として捉えたほうがよい。なお、スポーツコンテンツを活用した新たな取り組みは、メディアにも取り上げられやすい。その点でメディアとのリレーションシップを築いておいて損はない。テレビ局、OTT(DAZNなどのOver The Top)、Webメディア、新聞、雑誌などとリレーションがあれば、新たな取り組みの発信が可能となる。現状、メディア側もスポーツビジネスのネタ探しに積極的である。これらが、スポーツビジネスにおける主要プレイヤーであるが、補足としてマネタイズの方向から見たパートナーの考え方も紹介しておきたい。