ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #29
創業から12年増収増益で利益率30%、じげん平尾丈社長が語る「連続して成長できたビジネスモデル」
数字は3期分、ほぼ把握している
田岡 じげんを経営されてきた中で、平尾さんご自身の強みは、何にあるとお考えですか。
平尾 とにかく徹底的にやるという「コミット力」の強さだと思います。達成意欲や反骨精神がものすごく強いですね。
田岡 その力は、どこで培われたのでしょうか。
平尾 もともと、好きでしたね。特に、インターネットのビジネスは頑張った分が数字として表れるので、分かりやすいですよね。あとは、私は親に褒められたことがなかったので、何をすれば褒めてもらえるんだろうと考えるうちに、そうなっていったのだと思います。
田岡 お話をお伺いしていると、平尾さんは数字にすごく強いイメージがあります。
平尾 数字は、大好きですね。3期分の業績資料を壁に貼り付けて、数字をある程度把握しています(笑)。
田岡 本当ですか。それは、グラフにして可視化しているのですか。
平尾 いえ、数字が羅列された表です。どの事業がどれほど伸びているか、現在の収益はいくらなのかだいだい把握しているので、変動があればある程度分かります。
田岡 表では直観が働きにくいようにも思いますが、何列にも何行にも連なった数字を見ているのですか。
平尾 はい。並んだ数字を眺めながら、「20%、19%、18%…利益が逓減しているな。でも、売上は増収しているのに、変な投資をしていないかな」とか、「新規事業が累損を一掃したな」とかを把握しています。
田岡 やはりネットサービス会社の経営者の皆さんは数字の各論に強いですね。一休の榊社長も休日を金土にして、日曜日に出社して週次レポートを自分でつくっているとお伺いしました。
参考:「週次のKPIレポートを自らSQLを叩き作成。高級宿予約Webサイト「一休」再成長を支えた社長業」
平尾 素晴らしいですね。じげんを創業して13年、周囲からは思い通りに成長してきたと思われることもありますが、業績が下向きそうなときは、その予兆を数字から素早く察知して手を打っていくので、そう見えるだけだと思います。
上場した瞬間に、大手クライアントから競合指定されて、解約されたこともありましたが、それでも増収増益を続けてこられたのは、そうなることも、すべて想定して別のプランを用意していたからです。
戦略には、市場や競合の動きに応じたインタラクティブ性が必要なのです。真似されれば終わりですが、常にプランBを考えていれば、切り替えられる。それがダメならば、プランC。経営の多角化は、戦略の選択肢を増やすので、それ自体が「盾」になると考えています。
田岡 なぜ、そこまで考えられるのですか。
平尾 成功すれば、成功したデータが手に入り、それを拡大することができます。しかし、失敗すれば、そのデータは手に入りますが、失敗した理由は無数にあるため次につなげづらいのです。なので、成功にこだわっています。
それに、トップは好きでリスクとっているのでいいのですが、失敗したときにツラい立場に置かれるのは社員です。どうせ乗るならば、勝ち馬の方が社員も報われますよね。だから、常に最適解を選択していきたいと思っています。
後編「なぜM&Aした企業を成長させられるのか。コクピット型マネジメント術の極意」に続く
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