「マーケティング」という大海を、航海するための羅針盤 #12

人材が流出しない「いいマネジメント」を実現するための4つのポイント【DeNA 今西陽介】

前回の記事:
マネージャーの役割は、未来を話すこと。「良い1on1」の条件とは?
 

優秀な人をどうつなぎとめるのか?


 前回の「1on1ミーティング 」をテーマにした記事が、アジェンダノートの人気記事ランキングで1位だったようで、読者の皆さんがマーケティングはもちろん、マネジメントや人材育成にも興味があるのだなと実感しました。

 これは、マーケティング業務は「ひとりで、できるものではない」ということの裏返しだと思います。結局は、どれだけ賢い人が緻密な戦略を考えても、戦術レベルを実行する人の戦略理解が浅かったり、上司を信頼できなかったりなど、チームとしてひとつになれなければ、成功の確率は下がります。

 そして、この成功できない状態が長く続くと、メンバーのモチベーションが下がり、最悪なケースではメンバーが離脱して事業が成り立たなくなります。

 現在の人材市場を見ると、高いレベルで戦略の策定から実行までをできる人は稀有ですが、基本的にマーケティングは人材の流動性が高い職種であるため、チームを強固に組成できてないと人材が流出します。ひとりのマーケターのキャリアとして考えると、転職は好ましいことでもありますが、会社側の観点で言うと、優秀な人材は常につながりを持ち続けたいものです。

 今回は、こうした状況を踏まえて、人材流出しない「いいマネジメントとはなにか?」を考えていければと思います。ひと言でマネジメントと言っても、リーダーだけが意識するものではありません。全員が意識することで、ビジネスが前進します。そこで、次から「いいマネジメント」について、4つのポイントにまとめました。それぞれ紹介していきます。
 

1. チームのことを深く理解をしているか


 マーケティングの仕事でもマネジメントでもファーストステップは、お客さまの理解です。一般的に自社の顧客が「お客さま」になるのですが、これは社内にも当てはまります。その場合、第一優先のお客さまは「自分の所属チームの人」で、第二優先は「他部署の人」になりそうです。

 社長の場合は、売上利益が上がる部署が第一優先かもしれません。ベンチャーの場合は、多額の投資をしている事業の優先度が高いでしょう。つまり、マネージャーは、マーケティングにおいてお客さまを理解しようとするのと同じように、メンバーについても理解する努力が必要なのです。

 現在では、ティール組織の考え方を持つ会社も増えてきているので、あえてマネジメントを立てることなく、いわゆる自走力がある「個の集合体」のようなケースもあるでしょう。

 ただ、この組織体系でチームを運用しようと思うと、一人ひとりが高度なレベルでの立ち振る舞いが求められます。規模の小さなベンチャー企業やオーシャンズ11のようなスペシャリスト集団では成り立ちやすいですが、規模が1000人以上の大企業では難しい側面もあります。

 私の所属しているDeNAは2000人を超える規模でありながらセルフマネジメント力は隅々まで行き届いていますが、これくらいの規模になると、どうしても100%のティール組織は難しいと思っています。



 ただ、DeNAのマインドとしては、ピラミッド組織ではなく、一人ひとりが「球の表面を担う」という表現が浸透しています。自分が責任を持つ領域においては、「『〇〇さんの下』と誰かの影に隠れることなく、真正面から会社全体を代表する。そういう気概と責任感で仕事をしましょう」というイメージで「球の表面積」という言葉を使っているのです。

 社内では役職もありますが、あくまでも役職はただの役割で、リソースの差配など、ビジネスを前に進める・コトに向かうための役割としてあり、偉そうに威張るためのものでは決してありません。

 さて本題に戻します。こうした考え方のもと、チームメンバーの理解とは何をどこまでするものでしょうか? 

 私は前提として、例えばチームメンバーが10人いたとして、メンバーの喜怒哀楽といった感情に加えて、Will/Can/Mustを10人分把握できていることが需要だと考えます。ちなみにWill、Can、Mustは、以下になります。
 
1. Will=「やりたいこと=自身の意志」
2. Can=「できること=自分が持っている能力」
3. Must=「やらなければならないこと=ミッションに対する事業貢献」


参考:DeNA 敏腕マーケターが語る、理想的なキャリアに必要な3つのスキル

 マネージャーはこれを理解していないと、最適な組織構築ができません。私も完璧ではないので自戒を込めて書いている部分もありますが、理解をしようと努力をしているかがメンバーにも伝わりますし、相互理解にもつながっていくのではないかと考えております。

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