ビジネスにイノベーションを起こす「思考法」 #17
創業から18年経った現在も「0→1(ゼロイチ)」成功する新規事業のつくり方【オールアバウト代表取締役社長 江幡哲也】
新規事業立ち上げで重視するポイント
田岡 これまでたくさんの新規事業を立ち上げてきた中で、現在の江幡さんに影響を与えた事業は何ですか。江幡 リクルートのファックスネットワーク事業部で展開していたFNXの立ち上げですね。FNXは、データベースに連動してファックスを多数の宛先に一度に送れるというだけのサービスなので、どの企業にも販売できます。ただし、それは逆に「どういう使い方を提案すればクライアントの利益に貢献できるのか」ということを考えなければ、売れないというサービスでもあります。
企業に訪問して、業界やお金、情報の流れなどをヒヤリングし、業界ごとのコスト構造、何にどのような費用を使っているかを理解し、コスト圧縮やクライアントの事業の価値アップの提案をすることが必要でした。そのときに、ファックスのネットワークだけでは解決できないビジネスのアイデアが次々と生まれました。それが、私の財産になっています。
田岡 サンプル百貨店のビジネスモデル転換(前編「売上2億円事業を100億円規模に拡大させるアプローチ方法」)の源流ですね。江幡流「新規事業の立ち上げ方」のような型は、ありますか。
江幡 事業を立ち上げるときの最も重要な視点は、プラットフォーム型ということです。この考え方はリクルートにいたからだと思いますが、個別の会社にソリューションを提供するのではなく、まずは生活者や企業内個人がベースとなるサービスを考えます。
そして、3つのポイントがあります。1つ目が、そのプラットフォームによって、その分野のコスト構造が劇的に変わるかということ。2つ目が、新しい価値が生まれるかということ。3つ目が、レバレッジが効くかということ。その上で、流行り廃りではなく、長く続くサービスとして未来に価値が提供し続けられるかを考えます。
田岡 それは、王道のサービスということですね。王道であればあるほど、他の人も目を付けていそうな気はしますが、そうでもないのですか。
江幡 時代を先取りしていれば、誰も目は付けていませんでしたね。
田岡 しかし早すぎると、世の中に打ち出すタイミングが難しいですよね。
江幡 その通りです。「キーマンズネット」であれば、企業がインターネットに参入するタイミング、「All About」であればブロードバンドが始まったタイミングのように、大きなターニングポイントを逃さないことが大事です。
田岡 どうすれば、先が読めるのですか。普通の人には、なかなか難しいことだと思います。
江幡 「マーケットイン」と「プロダクトアウト」に分かれると言われますが、私は「マーケットイン」を信用していません。マーケットから考えることは、私でなくてもできます。新しい発想は信念から生まれると信じています。
田岡 社会の歪みを直すべきだ、と。
江幡 そうですね。ただ、より社会基盤に近いビジネスモデルを考えると、視野が広がる一方で、より公的で本来であれば国が担うべきことと重なってくる感覚もあって、ビジネスとしては難しくなってくることもあります。
田岡 それは、どのようなことですか。
江幡 今後、ヘルスケア領域を大きく展開していくつもりです。まだ言えないこともありますが、介護保険制度など国が仕切っている領域とのバランスを考える必要があります。そもそも病院など医療法人は、儲けるという概念からできていません。ただ、企業としては適度に利益を上げて生産を拡大していく必要があるため、そのジレンマが生まれる可能性があります。
田岡 ヘルスケア領域での新たな展開を楽しみにしています。本日は、ありがとうございました。
田岡敬氏 対談を終えて
江幡さんが、新しい事業を次々と生み出せるのは、リークルート時代の「キーマンズネット」立ち上げで様々な業界のビジネスモデルやコスト構造を研究され、それがパターン認識されていらっしゃるからだと思いました。
新規クライアントの獲得活動を行う場合も、既存クライアントと同業の会社を対象にするのは常套手段だと思いますが、それだけでは広がりがありません。業界は違っても、ビジネスモデルが同様な同じ「業態」を対象にすることで対象が大きく広がります。私がリクルートで営業をしていたときも、過去事例がないような業界でも、同じ業態の他業界の事例を元に応用して話ができるようになって、売上が上がるようになりました。
Amazonでビジネスモデルで検索すると、多くの図解入り本があります。年末年始の休暇を活かして読まれてみてはいかがでしょうか。様々なビジネスモデルのパターンが頭の中に入っていると、どんな職種の仕事であれ、非常にパワフルな武器となります。
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