ライジングアジェンダ2022外伝 #03

ライフネット生命 森社長が語る、ファイナンス視点から眺めるマーケティングとは【ライジングアジェンダ2022レポート外伝 第3回】

 

(2) 鈍化を起こした理由と、回復した理由


「鈍化した要因から、マーケティングとファイナンスのコラボレーションの有効性を説明する。成長鈍化のメカニズムは、マーケティングとファイナンスが絡み合う6つの要因から構成されていた。

 マーケティングの観点では、2010年頃から生活者のネットデバイスがパソコンからスマホへと急速に変化する中で、ノンペイドPRを中心として認知度を高めれば成長することができた環境が変化してしまった。ネットサービス各社は、生命保険を契約するタイミングはライフイベントがきっかけとなることが多く、10年に1回くらいのタイミングで訪れる。そのタイミングで思い出してもらい、契約をスムーズに実施してもらう必要があった。また、勝ちパターンを見つけ実行する再現性が必要なのに、短期的なCPA重視、短期的なPRに寄ってしまっていた。



 ファイナンスの観点では、KGIは何かを決める必要がある。生命保険は積み上げで売上が上がっていくので、今年の契約獲得は来年以降の利益になるはず。それなのに、利益を目標にしていては、単年度での利益が合わないため踏み込めなくなる。「良い赤字」を一定許容することで、KGI成長のためにマーケティングチームが伸び伸びと仕事ができるようになる。それを、ファイナンスサイドが経営・株主にしっかり説明できればよいだけなのだ」
 

(3) マーケターと経営の意識のずれを認識し学ぶ


 経営サイドから見て、マーケターの方々に強く期待する3つのポイントがある。

 ①予算と数値について
    ●「予算」は 説明責任を果たすための「基準点」に過ぎない
    →上にぶれても下にぶれても、ロジックをしっかり持つことが重要
    ●予算が大きくなる時がマーケターの腕の見せ所
    →予算が大きくなった時に「できます」と言えるマーケターは貴重           

 ②再現性について
    ●一時的ブームよりも構造的なテーマを捉えるほうが遥かに健全
    →調査は乗るべき波とそうでない波を見極めるため。再現性や持続性のある成功モデルにとことんこだわること     
    ●生活者に「未来を考える消費」をするよう促すことができる     
    →マーケターの成功は、顧客の成功はもちろんのこと、将来社会にとっての成功でもあるべき     

 ③キャリアについて
    ●事業もキャリアも非線形の爆発力を生むのは「掛け算」
    →「足し算」である程度成長したら、その次は異質なモノを組み合わせるという意識を持つ
    ●大切な気づきは異業種や異職種との会話の中に
    →半径50mの世界には「足し算」ばかり。「掛け算」をつくるには、積極的に社外に出て、他流試合の経験を積む意識を     
 

まとめ:福田の所感


 自分の強みとなる軸をベースに、別のジャンルを掛け合わせていくことの強さを感じました。いわゆるT型人材として、ひとつの強みを磨き上げながら、それを強みとして横に広げていくということが結果を出せる人材になりやすいということです。

 また、マーケターは一施策の遂行だけではなく、ファイナンス・経営の立場のメンバーを納得させられる、つまり予算の達成を単発的・短期的ではなく考えることの重要性を改めて感じました。特に若年層のマーケターに抜けがちな部分だと思いますので、意識して仕事をするといいでしょう。

 それでは、「ライジングアジェンダ2022」レポートの第4回もお楽しみに。

・「マーケティングでキャリアを築くために」ファミリーマート CMOの足立光氏とサンリオの須佐奈央子氏

・「知と汗と涙の近大流コミュニケーション戦略」近畿大学の世耕石弘氏
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