HANNOVER MESSE 2025 現地レポート #01

世界最大規模の製造業カンファレンス「Hannover Messe 2025」に日本企業が注目すべき理由【電通 森直樹氏】

 

最も存在感を出していたドイツのSIEMENS


 ハノーファー・メッセでも、米国を中心としたMicrosoft、Amazon、Googleの展示が目立つ一方で、ドイツで開催されている世界最大規模の製造業のカンファレンスということもあり、欧州企業の展示が主役となっている。

 その中で、最も存在感があるのはSIEMENSだ。SIEMENSは、ドイツのバイエルン州のミュンヘンに本社を構える世界的なテクノロジー企業で、産業、エネルギー、医療、インフラなど、多岐にわたる分野でソリューションを提供している。同社は、M&Aにより製造業を支えるソフトウェアやクラウドサービスを多く抱えている。

 たとえば、3D CAD(3Dコンピューター支援設計)ソフトウェアのNXは、主に製品設計やエンジニアリング、製造プロセスに使用される統合ソフトウェアソリューションで、設計から製造までのあらゆるフェーズに利用される。同社のブースでは、デジタル製造とリアルを融合したデジタルツインや、AIとデータシミュレーションを活用した製品開発の変革、製造ラインの自動化、予測保守、エネルギー供給の最適化などを革新的な製造現場のケースと技術を展示している。
  
  

 SIEMENSは、プレスカンファレンスやブースツアーに参加しているため、次回のレポートで詳しく紹介する。
 

ハノーファー・メッセの主役は、ドイツを中心とした欧州企業


 SIEMENS以外にも、ハノーファー・メッセで注目されていた欧州企業の展示も紹介する。
  
ドイツのERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)パッケージ企業であるSAPの出展。

 SAPは、製造業の変革とイノベーションを支援する最新ソリューションを紹介。また、「SAP Business Suite」は、AIとリアルタイム分析を活用し、クラウドベースでエンドツーエンドのサプライチェーンを統合。持続可能性や迅速な意思決定、パートナーとの連携を強化することで製造業の競争力向上を支援する。
  
フランスが本社の世界的な産業機器メーカーであるSchneider Electric(シュナイダーエレクトリック)の出展。

 Schneider Electricは、エネルギー管理と自動化の分野で幅広いソリューションを展示し、乳製品の工場を例に、自動化やデジタルツイン、AIを活用した省エネ・生産性向上の事例を紹介。資産の再利用やカスタマイズ、KPI管理、設備保守、サプライチェーン最適化まで、一連のソリューションを展示。スマート保守や清掃工程のAI最適化、工場全体の3Dモデルによる遠隔支援なども披露され、工場の効率化と持続可能性の向上を紹介している。
  
Bosch(ボッシュ:ドイツに本社を置き、自動車部品や家電、産業機器を扱うグローバル企業)は、水素プラントを出展。水素の生産や圧縮、貯蔵のためのソリューションとして、コンテナ型のプラントが展示されている。
 

大学のキャンパス感があるハノーファー・メッセの会場


 最後に、ハノーファー・メッセの会場について少し紹介する。会場であるハノーバー国際見本市会場(Messegelände Hannover)は、ハノーバーから電車で15分ほどの場所にある。会場は大学のキャンパスといった感じで、展示場周辺はのどかな郊外という雰囲気だ。展示会場の外がカジノなどでギラギラと輝いている米国・ラスベガスで開催されるCESとは真逆な環境だ。

 今回の「HANNOVER MESSE 2025 現地レポート」は、ここハノーバーからお届けする。
  
 
ハノーファー・メッセは、会場が複数の建物にわかれており、いたるところに緑地が広がる大学のキャンパスのような構造をとっている。とても良い環境でイベントを行っている。
 
ハノーファー・メッセの駅で、古い日本語のウェルカムボードを見つけた。日本企業とハノーファー・メッセとの関係の歴史を伺わせる。今年、はじめて参加した印象では、欧州域外で目立っていたのは中国と韓国であった。ぜひとも日本企業のプレゼンスを取り戻してほしい。
 
私が宿泊しているのは、ハノーファー・メッセの駅から電車で20分くらいの場所にあるヒルデスハイムだ。毎朝、電車で会場に通勤しているのだが、車窓からはのどかなドイツの田舎町が広がる。
 
電通 ビジネストランスフォーメーション・クリエイティブセンター エクスペリエンス・デザイン部長/クリエイティブディレクター
森 直樹 氏

光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。2023年まで公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構の幹事(モバイル委員長)を務める。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST(INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia(PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo公式スピーカー他、講演多数。CESでは、ライフワークとして各種メディアに10年以上の寄稿経験がある。

※第2回 ドイツのSIEMENS「Hannover Messe 2025」展示は、日本企業にとって見習う点が多い【電通 森直樹氏】 に続く
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