現場起点のEC・物流最前線 #04
オムニチャネル時代の「EC・物流」、PL(損益計算書)の観点から見えてきた勘所
2019/12/25
ブランドに好印象をもってもらうための物流
こんにちは。フェリシモの市橋です。こちらの連載ではEC・物流に取り組んでおられる方向けに現場視点での最新情報や取り組みをご紹介しています。
連載1回目 は、EC通販はマーケティングリサーチ・商品開発から顧客対応・返品対応までフルフィルメント全体が壮大なピタゴラスイッチのようにつながることがポイントだとお伝えしました。
連載2回目 は、流れを止めてしまいがちなEC・通販物流の「現場トラブルあるある」を、ツイッターのハッシュタグ #EC物流トラブルかるた と連動してお伝えしました。
連載3回目 は、社会課題でもある物流クライシスのひとつ「再配達」の解決に取り組むべき理由と、それに役立つ最新のラストワンマイルサービス30選をご紹介しました。
連載4回目の今回は、最近よく聞くオムニチャネルとは何なのか、当社が実際に運用している物流とPL(損益計算書)の観点からポイントをお伝えいたします。
アジェンダノートでも連載しているオムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎さんがこちらのサイト で解説されている通り、オムニチャネル とは『顧客情報や購買履歴は一元管理され、チャネルや部署に関係なく、顧客に最適な情報が提供されるようになる。顧客から見たら全て同じ屋号・企業』という状態であると定義されています。
普段、私たちが生活しているなかでも、この状態が実現できている企業とそうでない企業の商品やサービスに接することがあるかと思います。例えば、ECサイトで注文した商品を、最寄りの店舗に受け取りにいき、サイズ確認のため試着させてもらうようなシーンでは、商品管理から在庫管理、顧客情報、来店履歴、購買履歴までがすべて連動し、ECサイトから店舗、店員まで連携されている必要があります。
そうでない場合、商品を取りに行ったのに店舗に届いていないや、お店に届いているはずの商品を店員さんが把握していない、あるいはサイズ違いの在庫がお店にあるか分からないなど、なめらかな顧客対応ができません。逆に、すべてパーフェクトにスムーズな対応をされると、そのブランド(お店)に好印象を持ち、また買おうと思うのではないでしょうか。
特に商品を扱うECサイトの場合、商品を出荷してお客さまにお届けすることで売上が計上され、在庫をコントロールして利益が最大化するため、オムニチャネル環境を構築されている企業や、前提となる業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)を進められている企業が多いのではないでしょうか。
オムニチャネルの裏側の仕組みづくりの要点
では、そのオムニチャネルを支える物流が実際にどうなっているのか、図にしたものが次になります。この図では、「既存チャネル」、「自社EC」、「店舗配送」、「ECモール配送」の4つに分けていますが、そこは会社によっていろいろなので適宜読み替えてください。
この図のポイントは、在庫を一元管理し、各チャネル別に出荷しながら連動させて必要なチャネルに必要な数を出荷できるようにすることです。これがくずれると、「在庫があるはずなのに出荷できない」といった機会損失が発生したり、在庫が無いはずなのに実際には倉庫に商品が残っていて利益を圧迫したりします。
そういった事態を防ぐためには、「倉庫保管」して在庫化する前の「入庫受付/検数」を的確に行い、入り口から在庫数の精度を上げて正確な在庫管理を行うことが非常に重要です。なぜなら発注数がそのまま在庫数になるとは限りません。海外の工場などから入荷する場合、商品のケース数・入数(いりすう)が指示通りではないことが少なからずあり、在庫が狂う原因のひとつだからです。
また、「検品」を行うことでB品(規格外品)が一定数存在すれば、A品(規格品)在庫が減少しますし、ECのササゲ(撮影・採寸・原稿撮影の略語)のために在庫の一部を出庫してスタジオに送り込むと、販売できる在庫数が変動します。